■ 食品検査におけるセレウス菌 | |
【質問】
私は福岡県福岡市で食品の細菌検査をやっています。和菓子, 洋菓子, 惣菜, パンを製造している工場で, 今年からセレウス菌の検査を始めました。判定で不明な点がありますので宜しく御願いします。 (1) NGKG寒天培地上に白い集落を作り, 卵黄反応陽性で培地がピンクに変化しているものはすべてセレウス菌ですか??? 集落の大きさ, 形などの外見でセレウス菌以外のバチルス, 芽胞菌, 卵黄反応陽性菌との区別はできますか??? (2) セレウス菌は卵黄加マンニット食塩培地上では集落を作りますか??? 作るとすれば, その特徴はなんですか??? 外見だけでブドウ球菌と区別できますか??? (3) すべてのセレウス菌が食中毒を起こすわけではないようですが, 法的基準と工場内基準として妥当な数は??? また, 出荷を停止し, 廃棄すべき数はどのくらいでしょうか??? (4) また, 入荷している“生あん”を管理する方法と細菌検査で一般生菌数, 大腸菌群, セレウス菌の結果次第では入荷先を変更した方がいいと思われる数はどのくらいですか??? 【回答】
次いで (2) のご質問ですが, セレウス菌は, 通常7.5%食塩耐性がありませんので, 少なくとも24時間以内に「卵黄加マンニット食塩培地上」での集落形成は見られないのではないかと考えます。ただし, 48時間以上に培養時間を延長した場合には集落の発生が想定されますので考慮が必要でしょう。試しに接種して, ご自身でご確認されるのが賢明かと思います。 次の (3) ですが, セレウス菌が食中毒を惹起する根源であるトキシンには, 下痢原性トキシンと嘔吐トキシンの二種類が知られており, いずれのトキシンについても, その産生に関わる構造遺伝子 (structured gene) は染色体DNA上にあるわけではなく, プラスミドDNAあるいは (テンペレ−ト) バクテリオファ−ジのDNA上にあります。ですから毒素遺伝子がコ−ドされているプラスミドの非保有株やテンペレ−トファ−ジで溶原化されていない株については何の問題もないことになります。 さて, ご質問の「法的基準」に関しては特に示されていないと思います。ですから「工場内基準」については独自のご判断で対応されて下さい。なお過去の多くの集団食中毒の事例では, 食材1 gram中に10万〜100万以上のセレウス菌が存在したときに発生していたケ−スがほとんどであったことは報告されています。 最後のご質問の(4)ですが, 前述しましたように特に示されている基準はないようですので, これも独自のご判断で対応なさって下さい。 (信州大学・川上 由行)
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