03/02/20
■ C群連鎖球菌の病原性は???
【質問】 
 整形外科の医師から質問されてしまいました。 

 整形外科患者の関節液からβ溶血を示すグラム陽性球菌が発育してきました。A群なら大変だと思い, 当院は栄研化学の“セロアイデン・ストレプト・キット”を使用していますのですぐ実施しました。“C群でした”。教科書には, A群・B群については病原性が記載されているのですが, C群・G群についてはどうなのでしょうか??? 不定とか, よくわかっていないなどと記されているだけです。薬剤の感受性も良いのですが, 関節液といえば本来無菌的な材料と認識していますし, 医師からも「どういう菌なのですか???」と質問されて困っています。よろしくお願いいたします。 

【回答】 
 Lancefield C ,G群に属するレンサ球菌はヒトの鼻咽頭,皮膚および会陰部などに常在しており,ヒトの感染症の原因となることは稀とされてきましたが,近年A群レンサ球菌感染において認められるToxic shock-like syndrome (TSLS) を起こすという報告が散見されるようになりました。C,G群に限らずB群レンサ球菌でも同様の報告がみられ, 非A群レンサ球菌による劇症型感染症の存在が注目されてきています。またTSLSだけでなく敗血症などからの分離例も認められるため,特に“本来無菌的な材料”から分離された際には臨床と連絡をとり迅速に対処すべき菌種であると考えられます。C,G群抗原を保有する菌種としてStreptococcus dysgalactiae subsp. dysgalactiae (C群) ,S. dysgalactiae subsp. equisimilis (C,G群),S. equi subsp. equi (C群),S. equi subsp. zooepidemicus (C群)およびS. canis (動物由来G群) などが知られていますが, これらはA群レンサ球菌と類似した大型の集落を形成します。この他にも共通抗原をもつ菌群として微小な集落を形成するStreptococcus milleri group (A, C, F, G群保有) が存在しますが,この菌群は主に膿胸や肺膿瘍あるいは肝膿瘍といった全身の化膿性感染症に関与しています。同じC,G群抗原を保有するレンサ球菌でも大型集落を形成する溶連菌と微小集落を形成するS. milleri groupとでは引き起こす病態が幾分異なっています。 

(玉名中央病院・永田 邦昭)

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