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【質問】娘は未熟児で生まれ, 約1ヶ月間保育器の中ですごしました。帝王切開で出産したのですが,
院内感染でMRSAに感染しました。その当時, そんなにMRSAが問題にされていない時で,
病院からは自然界ではいくらでもいる菌で問題ないと説明されていました。娘も今年5歳。年一回の検査の結果,
未だにMRSAを保持しています。その為かどうかわかりませんが, 気管が弱く, よく気管支炎になり,
時には入院をしますが, 病院によっては, 入院を拒否したがるところもあります。毎日外来で点滴を打つ。隔離されるのも嫌だし,
このままずーと保持していかなくてはならないのか心配です。
【回答】未熟児で生まれ, 出産直後にMRSAを保菌しますと比較的長期間MRSAを保菌される方が多いです。この原因は,
明確にはされていませんが, 一言で言いますと「MRSAが咽や鼻の常在菌の一部」となっているためと思われます。一般的には,
退院後2〜6週間で常在菌が多くなるにつれてMRSAは少なくなって検出されなくなります。一方,
乳幼児が長く保菌するのは, 鼻腔・咽頭が絶えず湿潤状態であることと, 発汗量が多いため脇下や股間にも保菌していることが多いためです。これは,
MRSAが湿った所で増殖するからです。
この常在菌とは, 皮膚, 眼, 咽頭等に健常人が普通に持っている菌で, これらの菌が沢山いるおかげで,
外から入ってくる病原菌の侵入を逆に防いでいます。一般の人の咽頭粘液中には約20菌種位の常在菌がいますが,
娘さんの場合は, これらの常在菌の他にさらにMRSAが1菌種多くいると理解して下さい。
MRSAは通常は病原性を示しませんが, 風邪をひいたりして2次感染予防のための抗生剤を飲みますと他の常在菌が少なくなり,
結果としてMRSAが一過性に増えて時々, 発熱や痰が多くなる原因となることもあります。しかし,
抗生剤を飲む期間が2-3日でしたらほとんど問題はありません。
【何時頃消えるかについて?】
生後, 5年間MRSAを保菌されていますが, これから成長するに伴い消失していく可能性は高くなります。その理由は,
鼻腔や咽頭が大きくなるにつれ「湿潤」状態が改善されていくからです。しかしながら,
何時頃消えるとは誰も言えません。ただ, 黄色ブドウ球菌は, 健常人の約15〜30%の人が咽や鼻に保菌していますが症状はありません。MRSAは,
この黄色ブドウ球菌と基本的には同じ菌ですので症状が出ない限り心配する必要はありません。
【除菌方法について】
MRSAを持っていても心配する必要はない。・・と言われてもお母さんとしては,
入院を拒否されたりすることが多いため気苦労が多いかと思います。そこで, 5〜7日間で完全にMRSAを除菌できる方法を記した著書をご紹介します。この著書は近畿圏内の病院にて5,000症例以上に応用し,
除菌出来なかった症例は10例以下です。ただし, 厚生労働省が認可していないお薬を使用しますのでお医者さんの理解と協力が必要です。また今回のようなケースでは家庭内のお風呂場の消毒も必要です。
著 書: MRSA 消毒・除菌と治療
出版社: 最新医学社 2,500円
著 者: 浅利 誠志
(大阪大学・浅利誠志)
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