03/04/14
03/04/11
■ 小川培地陽性の場合, コロニー形態を報告する意義は???
【質問】
 臨床検査技師で, 検査センターに勤務して抗酸菌検査に従事しております。本来, 職場で話し合いを行い, まとめていかなければならない内容だと思いますが, 質問があります。

 抗酸菌検査をしていて疑問に感じていることがあります。固形培地 (小川培地) で陽性となった場合, コロニーの形態 (性状, 色) などを報告することについて, 良いのか悪いのか, 必要性はあるのか (現在はしておりません)。ごくまれにですが, 顧客 (医師) より「R, S, 結核菌群ですか???」と問い合わせが入ることがあります。抗酸菌検査を進めていく上で, 発育してきた菌を推測することはあります。R型のクリーム色 (灰白色) のコロニーであれば結核菌群を疑い, S型のクリーム色のコロニーであればMACを疑います。しかし, コロニーの見た目で抗酸菌の菌種の断定することはしてはいけないと思います。対応に困ります。病院であれば直接医師に培地を観察してもらい対応が出来ると思います。検査センターでは同定検査を行なってから結果を報告し, そこに時間がかかってしまいます。抗酸菌塗抹検査で陽性であれば, その時点で対応が出来ると思います。陰性の場合, 何週間か経ってから「抗酸菌培養陽性」という報告があり, 慌てるようです。培養陽性の菌が結核菌群であれば迅速な対応が必要になると思います。菌の性状を報告することが少しでも役に立つのか??? 結核菌群がR型のコロニーであることは知られていることなのか??? 最近 (???)ではM. canettiなどS型のコロニーの結核菌群 (???) もでているようです。医師は結核症の疑いを持った時点で患者へ処置 (隔離など) ができると思いますが, 検査結果は間違いがあってはならないものであり, R型, S型など, 参考程度の結果は誤解, トラブルを招く原因となる場合もあると思います。やはりするべきではないのでしょうか??? 少しでも早い対応をと考えますが, わかりません。長くなってしまいましたが, 固形培地 (小川培地) で陽性となった場合, コロニーの形態 (性状, 色) などを報告することについて, 意見がいただけたら幸いです。よろしくお願いいたします。

【回答】
(1) 固形培地の質問
 培養陽性の検体についてはコロニーの形態 (性状, 色など) を報告することは必要です。その時に, 形態で結核菌, 非結核性抗酸菌の区別は出来ないことをコメントとして記入することをお薦め致します。形態をしっかりと記録することは, 複数種類の抗酸菌による混合感染などで役にたちますので必ず記録して下さい。混合感染の場合は, 最初に発育して来たコロニーの上に発育してくることがあります。特にMAC (M. avium complex) の時には注意が必要で, 7週〜8週にかけて小さなR型のコロニーが認められることがあります。感染症の専門の先生であれば, 結核菌群がR型のコロニーであることは認識されているでしょうが, それ以外の先生方はあまり認識されていないと思います。

(2) 顧客 (医師) のトラブルを防ぐ為に  
 A. 先生方には形態 (性状, 色など) では結核菌群, 非結核性抗酸菌の区別は出来ないことをコメントとして入れられたらどうでしょうか。

 B. 塗抹陰性, 培養陽性でR型のコロニーの発育を確認したら必ず遺伝子検査で同定することを確約されてはいかがでしょうか。この方法ですと (当院では) 保険点数もカットされることはありません。

 C. 先生方に抗酸菌の生化学性状一覧表などを作成され, 配布されるのも良いかと思われます。

結核専門の先生が年々減る傾向にあると思われますので, 情報を検査サイドから発信することも重要になってきていると思っています。

(国立都城病院・斉藤 宏)

【質問者からのお礼】
御回答いただきありがとうございました。顧客から依頼を受けて検査を行なっているからには, 検査結果だけではなく, 必要な資料の配布, 情報の提供も必要であると感じました。今後, より良い方向へ進めていきたいと思います。ありがとうございました。


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