02/04/28
■ 輸送培地で提出された抗酸菌培養検体の取り扱い (Rejection policy)
【質問】
 教えていただきたいのですが・・・
 抗酸菌培養の依頼でシードスワブ1号で採取された検体が提出されました (皮膚の膿)。たびたび, このような検体が提出されたことはあったのですが, 以前, 輸送用培地に含まれる成分が抗酸菌の発育を抑制 (阻害) すると聞いたことがあったので, 輸送用培地で出された場合は検査不能として再提出をお願いしてきました。
 しかし, 他施設では参考値として検査を行っていると聞き, その点、メーカーにも問い合わせましたが, はっきりとした回答が得られませんでした。
 こんな基本的なことで恥ずかしいのですが, 教えていただけないでしょうか??? よろしくおねがいします。

【回答】
 シードスワブ1号は, 抗酸菌の輸送・保存を目的に開発された製品ではないため, 本菌の保存性などに関する資料がありません。故に, 残念ながら抗酸菌検査を目的とした使用の可否についてははっきりとした回答ができないのが現状です。
 しかし, 質問にある培地成分の影響については, 「寒天中の発育阻害物質が抗酸菌の発育を抑制する」という記載が専門書にある以外, 他の組成が影響する可能性はないと思います。この寒天についても, 現在用いている原料は脱脂・精製され, シードスワブ1号では使用量も少ないことから, 抗酸菌の保存性には影響ないと考えています。むしろ, 抗酸菌検査の検体採取の目的でシードスワブ1号などの綿棒の使用は, 採取量が少ないため, その後の検査に適していないことが問題と思われます。
 実際には, 膿材料などをシリンジで吸引し, そのまま, あるいはシードチューブなど適当な容器に入れて輸送するのが適切な方法とされていますが, 検体が吸引できないほど少ない場合は, 綿棒で採取し, シードスワブのような輸送培地中で検査室へ提出することになります。前述したように, 綿棒採取では検体量が少ないため, 培養結果で陰性となった場合は最終判断をせず, 参考結果として報告するよう心がけていただければ幸いです。
 ご質問の対象製品が当社のシードスワブ1号となっていましたので研究開発部門からお答えさせていただきました。
参考資料
・坂崎利一監修: 新細菌培地学講座・下II, 1990, 近代出版, 東京
・Master, R.N.: Section 3. Mycobacteriology, In Isenberg, H.D.(ed.) Clinical Microbiology Procedures Handbook, 1992, American Society for Microbiology, Washington, DC.

(栄研化学・池戸正成)

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