03/09/10
■ チオグリコール培地を滅菌後に急冷し, 遮光して保存する意味は
【質問】
 突然失礼致します。微生物の培養について質問がありまして, メールさせて頂きました。よろしくお願い致します。

 チオグリコール培地の作成, 使用方法で, 『高圧蒸気滅菌後に冷水で急冷すること, その後遮光して1〜30℃に保存すること』と記載がありましたが, これらの操作にはどのような意味があるのでしょうか??? 微生物の発育などにどのような影響を与えるのでしょうか???

お手数ですが, ご回答いただきますよう, お願い致します。

【回答】
 チオグリコール酸塩培地に含まれているチオグリコール酸塩は強力な還元剤であり, 培地の酸化還元電位を低下させて嫌気性菌の発育を可能にしています。さらに少量の寒天が加えられており, 培地粘度を上げて大気中の酸素を培地にとけ込み難くしています。高圧蒸気滅菌によって脱気された培地を急冷すると, 培地粘度が早く上がり, 大気中酸素のとけ込みによる培地酸化還元電位の上昇を抑えることが出来ます。その後, チオグリコール酸塩の働きで酸化還元電位を低く保ち, 嫌気性菌の発育支持力を維持しています。なお, チオグリコール酸は光に弱いため, 遮光保存が望まれます。

 チオグリコール酸塩培地と呼ばれるものには, 酸化還元電位指示薬としてレザズリンを加えた無菌試験用チオグリコール酸塩培地と, 指示薬を加えない臨床検査用チオグリコール酸塩培地の2種類があります。指示薬による色の変化が培地の1/3に達したら, 100℃で数分間加熱急冷して使用します。ただし, 加熱は1回のみであり, 再度1/3以上色が変化した培地は廃棄します。臨床用チオグリコール酸塩培地では培地の色が上部から少しづつ濃くなってくるので慣れれば判断出来ます。

(京都大学・田中美智男)

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