【質問2】
　いつも参考にさせていただいております。一般内科病棟に勤務する看護師です。針刺し事故についてのマニュアルの見直しを行っているのですが, スタッフがHBワクチン (計3回) を施行して抗体がついたのですが, 時間の経過とともに抗体価が減少してしまうケースが多くあります。今までのマニュアルでは, 10 mIU／ml以下は“陰性扱い”とし, 針刺しした場合, グロブリンの施行をする決まりにしていたのですが, 抗体価が下がっていてもワクチンを施行していたら, グロブリンの必要はないという意見もあります。そのあたりのエビデンスを含めたご回答をお願いしたいのですが。私の探す文献の中ではやはり, 10 mIU／ml以下は陰性扱いとするというのがほとんどでした。ただ, グロブリンを施行しなくてもよいというエビデンスがあれば, コスト的な問題も含まれるので, 施行しない方向にしたいと考えています。

　また, 針刺し後の追加ワクチンの必要性もあるのか教えていただけたらありがたいです。よろしくお願いします。

【質問3】
　こんばんわ。私は看護師ですが, HBワクチンについて質問させていただきたいと思います。当院では新規入職者でHB抗体が陰性の人に関してワクチン接種していますが, 今回5月から行ないましたが, 22歳の男の看護師にまったく抗体が出来ませんでした。来年も, 再度3回1クールの接種を行なった方がよいのでしょうか??? 

　また, HBV陽性の患者の針刺し事故を起こした場合, グロブリンと再度ワクチンまで行なった方がよろしいのでしょうか???

よろしく御指導のほど, お願いいたします。

【回答】
　HBワクチンを接種して, HBs抗体の産生が認められた後, HBs抗体の抗体価が減少し, “陰性”になる場合があります (3回目の接種後, 3年の経過で30%前後が陰性あるいは低抗体価 〔10 mIU／ml未満〕になります)。この場合, HBワクチンを追加接種すると, 記憶T細胞 (感作リンパ球) が刺激を受けて, 速やかにHBs抗体は陽転します。記憶T細胞は, 生涯, HBs抗体の産生を記憶し, B型肝炎ウイルスへの感染防衛機能があるとも言われていますが, 証拠はありません。

　ワクチン接種しても, HBs抗体への陽転が認められない場合は, B型肝炎ウイルスに対する防御抗体であるHBs抗体はありません。ワクチン接種をしてもHBs抗体が陽転化しない人は5%前後存在します。高齢者ほど抗体陽転率は低くなります。ワクチンの種類を変えた追加接種を勧めます。

HBs抗体獲得のないヒトおよび低抗体価しか獲得できないヒトへの対策
　・6ヶ月以内にHB肝炎ワクチンを第4回目として, 2倍量で追加接種する。
　・HB肝炎ワクチンの追加接種を1ヶ月間隔で2回する。
　・HB肝炎ワクチンの種類を変更して追加接種する。

　以上の対策をしてもHBs抗体の獲得が得られない場合は, さらにワクチンを接種しても, HBs抗体が陽性になる可能性が低いので, これ以上追加接種はしない。

B型肝炎ウイルス陽性の針刺し事故への対処
　・HBs抗体陽性の被汚染者は, 念のために経過観察をする。
　・HBs抗体陰性者あるいは低抗体価〔10 mIU／ml未満〕の被汚染者は次の予防措置をする。

予防措置
　・事故発生後48時間以内に高力価の免疫グロブリン製剤, HBIG 1,000単位を投与 (静注用または筋注用)。
　・汚染血液がHBe抗原陽性の場合はHB肝炎ワクチンの追加接種。
　 (HBs抗体が陰性の時は, 事故発生後1週間以内, 1ヶ月後, 3ヶ月後の3回接種)。
　・処置後の定期検査は1ヶ月に1度とし, 1年間は経過観察する。