05/03/01
05/03/02
■ MGITを用いた結核菌薬剤感受性試験
【質問】
 衛生研究所で結核菌の検査を担当している者です。いつも日常検査にJARMAMの質問箱を参考にさせていただいています。当所では, これまで結核菌の薬剤感受性試験にベクトンデイキンソン社のBBL MGIT法を用いて, 用手法で薬剤感受性試験を行っておりました。ところがその試薬であるSIREが製造中止になってしまい, 現在は全自動抗酸菌培養システムのバクテックMGIT960用の試薬しか売っていません。当所では検体数が少ないため, 高額な全自動抗酸菌培養システムは購入できず, 困っています。

(1) SIREの代わりに, バクテックMGIT960用の試薬を用いて, 用手法で薬剤感受性試験を行うことは可能でしょうか???。メーカーに問い合わせたところ, バクテックMGIT960用の試薬 (ミジットシリーズ ストレプトマオイシンイソニアジドリファンピシンエタンブトール) は全自動抗酸菌培養システムにしか使えないとの営業の方からの回答を受けました。

(2) もしこの用手法が使えないとすると, 他にこれに代わる液体培地を用いた検査法はあるのでしょうか??? 

 当所では, ブロスミックMTB−I法は用いています。ご教示の程, よろしくお願いします。

【回答】
 BBL MGIT抗酸菌システム感受性検査用剤 (以下, 用手法MGIT試薬) は, 用手法の結核菌感受性試験用試薬として販売してまいりましたが, 過去長期間にわたって受注がなかったことから, 平成16年末をもって販売を終了いたしました。現在は全自動抗酸菌培養装置 MGIT 960用の試薬として, バクテックMGIT 960結核菌薬剤感受性検査用ミジットシリーズ (以下, MGIT960試薬) のみを販売しています。用手法MGIT試薬とMGIT 960試薬による結核菌感受性試験法には高い相関性があります。しかしながら, 用手法MGIT試薬ではコントロール培地が陽性と判定された後, 2日以内に薬剤添加培地を判定するプロトコールとなっていますが, MGIT 960試薬ではコントロール培地と薬剤添加培地の中での結核菌の発育をMGITセンサーの蛍光発光による発育値として捉えて判定するという異なる判定原理を用いています。MGIT 960では, コントロール培地の発育値がある閾値を超えた時点で, 薬剤添加培地での発育値を読み取り, 感受性 (S) または耐性 (R) と判定します。それぞれの方法で得られた結果が, 標準的な感受性検査法と十分な相関が得られるように, 異なる判定方法を採用していますので, MGIT 960試薬を, 用手法MGIT試薬と同様の手法, 目的で使用することはできません。用手法の結核菌感受性検査用試薬としては, 他社から数種類の製品が発売されています。

(日本ベクトン・ディッキンソン・小林 郁夫)
【回答の追加】
 “当所では, ブロスミックMTB−I法は用いています”ということですが, ならば, なんの目的で継続してMGITを使用したいのでしょう。MGITとブロスミックMTB−I法のふたつを併用して試験する必要はないと考えます。
(琉球大学・山根 誠久)
【質問者からのお礼】
 丁寧なお答えありがとうございました。参考にさせていただきます。
 ところで当研究所室では, 最初からブロスミックMTB−Iを用いるのではなく, MGIT法でどれかに耐性と判定された株についてのみ, ブロスミックでMIC値を測定しております。他にビットスペクトル法でも耐性かどうか測定し, それぞれの方法の相関も調査しております。またいろいろご教示くださいますようよろしくお願いします。

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