06/07/03
■ 卵黄加マンニット食塩培地に生えた黄色ブドウ球菌
【質問】
 ●●大学修士2年の■■と申します。以前に同様な質問がありましたら申し訳ございません。

卵黄加マンニット食塩培地にて黄色ブドウ球菌 (分与株で同定済みのものです) を培養したところ, 培地が黄色くなるのではなく, ピンク色に変色しました。また卵黄反応も見られませんでした。同定キットで再確認をしましたが, 黄色ブドウ球菌と同定されたので他の菌が混ざっているわけではないようです。色々調べましたが, 黄色ブドウ球菌の周りがピンク色になるとは書いてありませんでした。このようなことは起こりうることなのですか??? よろしくお願いいたします。

【回答】
 卵黄加マンニット食塩培地は, マンニット分解性と卵黄反応を同時に検出できるブドウ球菌の選択分離培地です。マンニットを分解すると指示薬であるフェノールレッドが黄色に変色しますが, 分解しない場合に培地はアルカリ性となり, 無変色かピンク色を呈します。同定キットで黄色ブドウ球菌であったとのことですが, グラム染色やコアグラーゼ試験を確認されたでしょうか??? 分与株はどのような環境で保管されていたものでしょうか??? 同定キットの中にマンニット分解試験項目があったでしょうか??? もしあれば, その時の反応は陽性でしたか, 陰性でしたか??? これらのことを今一度確認しては如何でしょうか。分与株に問題がある場合として, 保存環境により本来の黄色ブドウ球菌の持つ性状が欠落することがあります。そのためマンニット分解性や卵黄反応が陰性になったとも考えられます。培地に問題がある場合としては, 有効期限内の培地か否か, 市販されている生培地か, 自家製かなどにより, 不良品が考えられます。いずれにしても素性のしっかりした黄色ブドウ球菌の標準株と分与株を同時に植えて, それぞれの性状を確認することをお勧めします。鑑別表に掲載されている各性状の陽性率は80〜90%の成績ですので, すべての株が陽性となることはないことも知っておく必要があり, 例外的な菌株も存在します。その時は他の性状を調べて総合的な判断のもとに同定することが一般的です。

(愛媛大学・村瀬 光春)


戻る