07/08/15
07/08/23
■ 職員の健康診断でクオンティフェロンが「陽性」
【質問】
 はじめまして。●●病院で検査技師をしております■■と申します。

 当院職員の健康診断にて, レントゲン写真にわずかに陰影をみとめた37歳女性職員がおり, 喀痰での細菌検査が提出されました。ガフキー (陰性), 結核菌のPCR (陰性), 培養は検査中の結果を得ています。そしてツベリクリン反応よりも, クオンティフェロンを行いましょうと言うことで検査しましたところ, 測定値E 2.1 IU/ml、測定値C 0.76 IU/mlと, いずれも「陽性」の結果がでましたので“疑結核”の診断がつきました。従って, 予防内服の対象となるのでしょうが, 質問が3つあります: 

(1) クオンティフェロンの陽性数値が, いくつ以上から予防内服の対象とするべきなのか???

(2) 再度胸部レントゲンを撮り, 影がなくなっていた場合 (自然治癒) は, 予防内服しなくてよいのか???

(3) 感度も特異度も高いクオンティフェロンだが, “偽陽性”という事例はないのか??

尋ねられても答えられませんでした。すみませんがお教え下さい。よろしくお願い致します。

【回答】
 質問を頂いた段階では喀痰培養検査中とのことですが, 分離培養の結果が抗酸菌「陽性」であれば菌を同定し, 結核症または非結核性抗酸菌症の治療を行います。従って今回の質問は, 培養検査の結果が陰性であった場合を前提として回答します。

(1) QFTによって得られたIFN-γの値 (測定値E及び測定値C) は, 感染の程度, 免疫応答レベル, 活動性の指標を示唆するものではありません。また, これらの値により活動性に進展する可能性を推測することもできません。従ってQFTの結果の値の大小によらず, 1. 結核患者に接する機会がある職場に就労する時に行った本検査の結果が「陽性」であり, 胸部レントゲンで陳旧性結核の所見を認め, 結核の治療歴がない場合, あるいは胸部レントゲンで結核性の所見が認められない場合でも, 年齢やこれまでの接触状況などから総合的に判断し, 「発病すれば周りに影響の大きい職種」であることを考慮して, 潜在性結核感染の治療としてINH投与を行うことが考えられます。また, 2. QFTのベースラインが「陰性」の者が定期健康診断を受けた時, あるいは不用意に結核患者と接したときのQFTが「陽性」であれば, 結核発病の有無を精査し, 発病が否定されれば, 必要に応じて潜在性結核感染の治療としてINH投与を行います (クォンティフェロンTB-2Gの使用指針)。

(2) 初回の胸部レントゲンで認められた陰影および, それが消えた原因が不明ですので, それだけで判断をするのは困難ですが, 上述の1.のように, 年齢やこれまでの接触状況などを考慮し, 臨床所見と併せて総合的に判断する必要があります。

(3) Moriらは, BCG接種歴をもつ看護学生 (平均年齢20歳) を対象に試験を行った結果, QFTの陽性率は1.9%であったとしています。この群に結核感染者がいないと仮定すれば, 特異度は98.1%となります。しかしながら, 結核感染を受けていないという絶対基準は存在しないことから, 仮に最近の20歳での既感染率を1%と推定し, 既感染者の89%がQFTで陽性になると仮定すると, 真の特異度は99%となります。また, 米国の観察では, BCG未接種の健常人におけるQFT陰性率は99.8%であり, いずれもQFTの特異度が極めて高いことを示しています。ただし, 結核以外の疾患によってQFTが陽性になる (偽陽性) という点から見れば, M.kansasiiなどいくつかの非結核性抗酸菌もESAT-6, CFP-10を分泌することから, kansasii症患者においてもQFTが「陽性」となります。また, 検査上の問題で, 5%以上の溶血がみられる検体を用いた場合, 偽陽性となると言われています。

(日本ビーシージー製造・山崎 文子)


【質問者からのお礼】
 お忙しいところ, ご丁寧にお答えいただきありがとうございました。 当院には呼吸器専門医がいないため, 総合病院に受診してもらい, 内服していただいております。ちなみに, 培養は「陰性」のままでした。また何か疑問に思うことが出来ましたら, よろしくお願いいたします。


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