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精神疾患における社会機能障害は、疾患の臨床経過および転帰に関与する要因と考えられている。これまでに統合失調症 (SCZ)、双極性障害 (BIP)、うつ病 (MDD)といった精神疾患における社会機能障害について報告されているが、疾患間の比較はなされていない。本研究では、SCZ、BIP、MDDといった主要な精神疾患患者間における社会機能障害に特有の要因を見出すことを目的とした。80例のSCZ 、27例のBIP 、29例のMDD、68例の健常対象者を対象とし、社会機能はSocial Functioning Scale (SFS) を用いて評価した。結果は、健常対象者と比較してSCZ、BIP、MDD全ての患者群では、SFS総得点で低値を示したが、患者群間では総得点に差を認めなかった。次に、患者群間でSFSの7つの下位項目 (Withdrawal, Interpersonal communication, Independence-performance, Independence-competence, Recreation, Prosocial activities, Employment/Occupation) を比較したところ、SCZ患者群ではMDD患者群よりInterpersonal communication (対人関係) で低値を示した。また、健常対象者において、統合失調型パーソナリティ傾向を評価するSchizotypal Personality Questionnaire (SPQ) の得点とInterpersonal communicationの得点の間に有意な負の相関が認められた。すなわち、対人関係の不良な人ほど統合失調型パーソナリティ傾向が高いことが分かった。Interpersonal communicationは臨床症状や服薬量、罹患期間などと相関していないことや、精神病罹病危険状態(At Risk Mental State)では低値を示すという報告から、病前より安定して低値を示すことが推定されるため、SCZの病態解明研究においてより良い中間表現型となり得ることが示唆された。
→Psychiatry Research
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【論文発表】精神神経科学 大学院生 康山俊樹さんらの論文がPsychiatry Research誌に掲載されました
論文タイトル:Differences in social functioning among patients with major psychiatric disorders: Interpersonal communication is impaired in patients with schizophrenia and correlates with an increase in schizotypal traits精神疾患における社会機能障害は、疾患の臨床経過および転帰に関与する要因と考えられている。これまでに統合失調症 (SCZ)、双極性障害 (BIP)、うつ病 (MDD)といった精神疾患における社会機能障害について報告されているが、疾患間の比較はなされていない。本研究では、SCZ、BIP、MDDといった主要な精神疾患患者間における社会機能障害に特有の要因を見出すことを目的とした。80例のSCZ 、27例のBIP 、29例のMDD、68例の健常対象者を対象とし、社会機能はSocial Functioning Scale (SFS) を用いて評価した。結果は、健常対象者と比較してSCZ、BIP、MDD全ての患者群では、SFS総得点で低値を示したが、患者群間では総得点に差を認めなかった。次に、患者群間でSFSの7つの下位項目 (Withdrawal, Interpersonal communication, Independence-performance, Independence-competence, Recreation, Prosocial activities, Employment/Occupation) を比較したところ、SCZ患者群ではMDD患者群よりInterpersonal communication (対人関係) で低値を示した。また、健常対象者において、統合失調型パーソナリティ傾向を評価するSchizotypal Personality Questionnaire (SPQ) の得点とInterpersonal communicationの得点の間に有意な負の相関が認められた。すなわち、対人関係の不良な人ほど統合失調型パーソナリティ傾向が高いことが分かった。Interpersonal communicationは臨床症状や服薬量、罹患期間などと相関していないことや、精神病罹病危険状態(At Risk Mental State)では低値を示すという報告から、病前より安定して低値を示すことが推定されるため、SCZの病態解明研究においてより良い中間表現型となり得ることが示唆された。
→Psychiatry Research