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【論文発表】 スチューデントリサーチャープログラム 梁祐輔、武内美奈、上田菜保子、精神神経科学 大井一高講師らの論文"Olfactory Function in Neuropsychiatric Disorders"がPsychiatry Research誌に掲載されました

 嗅覚の重要な機能の1つに、ガス漏れや腐敗臭など危険から身を守ることが挙げられる。我々の生活において嗅覚は重要な機能を担っているが、年齢とともに嗅覚機能は低下することが知られている。また、これまでに、健常者と比較して様々な精神神経疾患患者では嗅覚機能の低下が報告されているが、各疾患間の比較はなされていなかった。本研究では、精神神経疾患間で嗅覚機能の差異を見出すことを目的とした。金沢医科大学精神科初診外来患者318例を対象とし、精神科診断基準の1つであるICD-10を用いてF0からF9に分類した。嗅覚機能はOpen Essence (OE)を用いて評価した。
 全診断群間で嗅覚機能を比較したところ、認知症などを含む器質性精神障害(F0)は、他の疾患群と比較して嗅覚機能が低いことが分かった。これまでの報告では、嗅覚機能は年齢とともに低下することが報告されているが、本研究でも疾患にかかわらず、年齢とともに嗅覚機能が低下することが分かった。また、男女間では男性は女性に比べ嗅覚機能が低いという報告があり、本研究では優位ではないが男性は女性に比べ嗅覚機能が低い傾向を認めた。年齢や性別は嗅覚機能における交絡因子と考えられたため、これらの交絡因子を共変量に入れて解析を行ったが、同様にF0では他の疾患群と比べ嗅覚機能が低いことが分かった。次に、嗅覚機能の低下がみられたF0を細分類するとF00のアルツハイマー型認知症が主要な構成疾患であったため、F00と、F1~F9の疾患間で嗅覚機能を比較した。F00はF0の解析結果と同様に、他の精神神経疾患に比べ嗅覚機能が低いことが分かった。
 以上の結果より、これまでアルツハイマー型認知症患者では、健常者と比べて嗅覚機能が低いことが知られていたが、本研究により、健常者だけでなく、他の精神神経疾患と比較しても嗅覚機能が低いことを見出した。
 本研究は、現在5年生のスチューデントリサーチャープログラム 梁祐輔さん、武内美奈さん、上田菜保子さんの3年生の頃からの地道な活動の成果になります。

Psychiatry Research


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