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【論文発表】病理学I 平田英周元講師ら(現所属・金沢大学・がん進展制御研究所)の論文「Active K‐RAS induces the coherent rotation of epithelial cells: A model for collective cell invasion in vitro」が、Cancer Science 誌に掲載されました。

 MDCK細胞はイヌ尿細管由来の細胞で、通常の培養皿にまけば自発的に遊走するが、細胞外マトリックスに富んだ環境では細胞塊や類器官(腺管)と呼ばれる3次元構造を形成する。今回、ライブイメージングによって細胞塊が回転することを見出した。細胞塊に、膵癌や大腸癌で変異の見られるK-Rasの恒常的活性化型を発現させると回転速度が増加した。腺管では細胞塊よりもゆっくりであるが回転し、K-Ras活性化発現によって速度が上昇する。細胞塊ではCCNB1が必要なのに対し、腺管ではHDAC阻害薬処理や活性型b-カテニンの発現によって回転が促進することを見出した。腺管の回転を促進する因子は細胞塊の回転では無効であることも明らかにし、細胞塊と腺管の動態を制御する分子機構が異なることも示唆した。大腸癌や膵癌の浸潤端では細胞塊や腺管が見られることから、癌の浸潤・転移モデルとして有用であると考えている。試験管内で観察された回転が生体内でも見られることも考えられるし、間質に様々な因子や細胞がある状態では異なるフェノタイプとして表現されているかもしれない。今後生体内でイメージングすることにより細胞塊や腺管の回転の意義を明らかにしていく
 以上の研究は、私学事業団 平成29年度 学術研究振興資金 若手研究者奨励金などの支援を受けて行われた。

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