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対象は本学嗅覚外来に感冒後に異嗅症症状で受診した患者のうち、新規嗅神経画像診断法“オルファクトシンチグラフィ”の臨床試験を行った20例を対象とした。内訳は基準嗅力検査で異常値であった症例(嗅覚低下群10例)または基準嗅力検査で正常値なのに異嗅症の訴えがある症例(嗅覚正常群10例)である。
オルファクトシンチグラフィによって測定された鼻腔内嗅神経細胞の再生度合を示す指標は、嗅覚正常群で有意に高かったのに対し、嗅神経軸索の嗅球への伸展度合を示す指標については両群間で有意差を認めなかった。また、MRI画像で測定された嗅球体積推定値も嗅覚正常群の方が有意に大きい結果であったが、両群ともに健常レベルには達していなかった。以上より、感冒後異嗅症では嗅覚検査で正常値を示した場合、嗅神経軸索再生が不十分で第一脳神経への感覚刺激伝達が正常な状態でないことから、嗅球再生も不十分であり本来のにおいの感じ方と異なる可能性が示唆された。異嗅症の改善のためには、嗅神経再生を促す治療法の開発が今後の課題である。
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感冒後異嗅症のメカニズムを解明 耳鼻咽喉科学 志賀英明准教授らの論文 "Nasal thallium-201 uptake in patients with parosmia with and without hyposmia after upper respiratory tract infection"がInternational Forum of Allergy & Rhinology誌に掲載
感冒後に本来のにおいとは異なって感じる異嗅症症状を訴えて、耳鼻咽喉科を受診した患者のなかで、嗅覚検査では正常値を示すケースが少なくない。このような症例ではこれまでは心因性との鑑別が困難で、治療法も明らかではなかった。本研究では感冒後異嗅症における嗅神経と第一脳神経先端の嗅球の障害を新規画像診断法で明らかとした。嗅球はにおい刺激を識別して脳神経中枢へ伝達する重要な機能を担っている。対象は本学嗅覚外来に感冒後に異嗅症症状で受診した患者のうち、新規嗅神経画像診断法“オルファクトシンチグラフィ”の臨床試験を行った20例を対象とした。内訳は基準嗅力検査で異常値であった症例(嗅覚低下群10例)または基準嗅力検査で正常値なのに異嗅症の訴えがある症例(嗅覚正常群10例)である。
オルファクトシンチグラフィによって測定された鼻腔内嗅神経細胞の再生度合を示す指標は、嗅覚正常群で有意に高かったのに対し、嗅神経軸索の嗅球への伸展度合を示す指標については両群間で有意差を認めなかった。また、MRI画像で測定された嗅球体積推定値も嗅覚正常群の方が有意に大きい結果であったが、両群ともに健常レベルには達していなかった。以上より、感冒後異嗅症では嗅覚検査で正常値を示した場合、嗅神経軸索再生が不十分で第一脳神経への感覚刺激伝達が正常な状態でないことから、嗅球再生も不十分であり本来のにおいの感じ方と異なる可能性が示唆された。異嗅症の改善のためには、嗅神経再生を促す治療法の開発が今後の課題である。
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