教室の出来事

2024.10.29

安本和生教授が次世代北信がんプロ金沢医科大学市民公開講座「がんを知り、がんに備える。-がんの治療最前線-」で司会を務めました。また、柴田健雄先生が基調講演「子宮がんの最新治療と今後の可能性」を発表され、北國新聞2024年10月20日朝刊に掲載されました。


2024.08.20
「医科大どおり第30巻夏号」に集学的がん治療センターの紹介が掲載されました。

2024.05.28
医局にて学生さんとの一枚

卒業アルバム用の写真撮影が医局にて行われました。
本年4月より、薬物療法専門医の資格取得のため当病院産科婦人科の柴田健雄先生が併任されております。また助教として犬嶌明子先生も着任されました。


2024.03.21
北信がんプロの市民公開講座にて

3月20日金沢大学主催で北信がんプロの市民公開講座がホテル日航金沢で開催され、今回座長の立場で参加した。市民の方々もWEBも含めて120名の参加があったとのこと。がん医療人のプロを育てる国主体のプロジェクトの一環での市民公開講座であった。


2024.03.15
がん薬物専門医取得に学内から研修生

久しぶりにエッセイを書こうと思う。
それというのも、この1年、正確には令和5年度にひとりの研修生が当講座にがん薬物療法専門医を取りに来てくれたから。
その方は、学内の小児科の講師の先生。トトロのような、大仏さんのような愛嬌のある大柄の、物事に対する姿勢がとても誠実で熱心なしみじみとする岡田先生だ。

小児がんは大人のがんに比べ数が少ない。新たな治療薬や治療法開発のためには臨床試験を実施する必要があるのだが、全国規模の多施設共同参加型試験にしないと症例数が集まらない。 従来の治療法では効果が限られてしまう患者が目の前にいたら、試験に参加させてあげたいのはもっともな話。 しかしその参加要件が先頃変更になり、「施設の担当責任者はがん薬物療法専門医の資格を有すること」と、専門医資格が必須要件になったとのこと。 当方の有している専門医資格が臨床試験参加の必須要件!ここに来てその専門性を意味づけされたことはある意味うれしい一面もあるが、大変な驚きでもあった。 時代は変化してきている。

簡単にがん薬物療法専門医についてお話すると、 日本臨床腫瘍学会が認定する専門医で、取得には結構ハードルが高いと評判の専門医。 学会認定施設での30例の症例詳細報告からはじまり、筆記試験200問4時間7割以上の正解必須、翌日には30分の口頭試問とつづく。大学受験勉強を彷彿させる厳しさがある。合格者は毎年100名程度で、いまだ全国には1700人ほどしかいない。がん治療認定医という日本がん治療学会が進める資格者は数万人規模なのでその差は歴然である。 がん薬物治療は、今の時代、がんの予後を決めている。 現在、主な4つのサブグループから構成されている。古くからの殺細胞性抗がん薬、ホルモン療法薬、分子標的治療薬と免疫チェックポイント阻害薬である。 がんの増殖進展におけるゲノム異常の明らかな関与から、個々のがん症例でその原因に基づき個別化や臓器を超えて同じ異常を持つがん同士、ゲノムベースで臓器横断的ながん薬物治療へと変貌を遂げている。

学内留学研修生の受け入れは今回初めてのことだった。 当学のなかにひとりでも多くのがん薬物療法専門医が増えてくれることで、がん治療の質向上、治療支持医療両面でのリスク回避が進み、何より患者さんに最適ながん医療を届けられる医療人の育成につながるものと思われた。 小児科の先生に続き、この春から産婦人科講師の柴田先生も専門医取得にやってきてくれる予定だ。


JSMO2024にて(20240222)

2024.03.13
移動の季節です

近くの公園の梅が美しく、桜がもうすぐ咲きそうで気持ちが自然と上向く気がします。
移動の季節です。当病院小児科の岡田直樹先生が昨年4月より1年間、薬物療法専門医の資格取得のため、腫瘍内科を併任されていました。とても丁寧なお方で患者様からも「岡田先生のお陰で安心して入院治療をうけることが出来ました」とのお声も届いております。来月4月からは岡田先生と交代する形で当病院産科婦人科の柴田健雄先生が併任でいらっしゃいます。事務担当

2023.09.28
陰ながら応援申し上げております

やっと涼しくなりほっとしております。皆様いかがお過ごしでしょうか?
がん薬物療法専門医の資格取得のため、当病院小児科の岡田直樹先生が本年4月より腫瘍内科学に併任でいらっしゃいました。日々お忙しそうですが、何事にも積極的なご様子は周りの者をも元気にして下さいます。陰ながら応援申し上げております。事務担当

2022.03.01
このコロナ禍に思う

2019年12月初め中国武漢で(2-3月現在北京2022冬期オリンピック開催中)感染者の報告があって以来早2年が経過した。
今なお、感染力の強い変異オミクロン株による第6波が猛威を振い続けている。先週80人を超える園児のクラスター発生の報道が山陰でもあったほどだ。このコロナ禍はいったいいつまで続くのだろう...

この暗澹たる先の見通せぬ時期ではあるが、当教室にもひとすじの光とも言えるうれしい知らせが届いた。大学院生の葛西君の投稿中の英語論文がこの2月末に無事受理されたことだ。ご協力いただいた方々にこの場をお借りして心から感謝を申し上げたい。 当教室はいまだ限られたスタッフ数であるがゆえに、ひとりで何役もこなす必要がある。入院症例の対応など臨床業務はもとより学生の医療の実践に向けた教育(臨床前実習や講義など)が年間を通してあるため、なかなかスタッフに休む暇がない。 スタッフ数に余裕があれば、学位取得のための研究期間は基礎研究講座に2-3年お世話になったり、臨床業務から一旦外れて研究に専念できる環境を整えたりすることが多い。いずれにせよ、研究の補助をしてくれるスタッフには感謝しかない。

基礎研究の原著論文を発表することは、まず研究構想にはじまり、データの収集と解析、英語での論文作成、投稿後幸いにもレビューに廻ったとしても彼らからのコメントにしっかり答えいよいよ発表となるわけだが、一連の工程は「大変」のひとことである。 私も学位研究に勤しんでいた頃、恩師に、「論文を準備して投稿するまでの作業はたとえどのようなレベルの雑誌でも苦労は一緒」、と助言をもらったことを思い出す。この言葉の主旨は、同じく苦労ならできるだけレベルの高い雑誌を目指しなさいという意味ではあったが、研究開始から論文公表にまで至る過程はとにかく大変な作業なのだということをもう一つの意味で受け取った。

学位取得することは医学博士として認められることではあるが、最も重要なことは、基礎的研究を通して、解決する方法(実験方法)・信頼性あるデータの収集、そして結果の解釈から結論に導くという行程を修得することにある。修得した経験をもとに、臨床に戻って新たな課題を自分で見つけ修得した実験法を駆使して解決を図ることができるようになる。研究をすることがとても楽しいと思えるようになればしめたものだ。 探究心を持ち続け、諦めない強い気持ちで臨床に研究に邁進してもらえたら望外の喜びである。

「意思あるところに道は開ける」 “Where there’s a will, there’s a way.” かの第16代アメリカ合衆国大統領エイブラハム・リンカーンの言葉と聞いているが、大事にしたい言葉である。



2022.02
BBRC誌に掲載

2021.06.16
医局の近況

最近医局の模様替えをした。(写真参照)
備品などが整然と配置され、すっきりと明るい落ち着いた雰囲気となったように思う。自己満足?(笑)

新型コロナ対策で真っ先に購入した、見張りAIコントロール高性能ウイルス除去機能付き空気清浄機が、今日もフル活動中だ(写真参照) 皆が集まる医局には、いつもコーヒーの香る空間を意識して、コーヒー香が一段と味わえる豆挽き作業が大事と考え、DeLonghi自動豆粉砕機をまず購入。ドリップ抽出用に、保温機能のある湯沸かし器も併せて購入(写真)。水は、以前から富山の入善地区あたりの天然水を定期購入している。この空間もコーヒーたちも、最近では大切な医局の一員になっていると思うが、スタッフはどうかんじていることだろう?まあ、一時でも休息感と心の安らぎが届けられたら良いが、、、(笑)。

また学生・研修医の諸君に対しては、目下自身を含め意識改革を図っている。それは、彼らが抱いている、「腫瘍内科」という診療科の難しく重苦しいイメージを少しでも払拭できるようにすること。どうも、投与する抗がん薬の種類を考えているだけのイメージのようだ(別の大学で研修医をしている愚息から聞いた話、、、)。なんやら非常に寄りつき難いイメージが先行してしまっている。だから、この4月私が担当するようになって、学生には、「わかりやすい、取っつきやすい科のイメージを抱いてもらえるよう、セミナー等でもがん治療が専門の「がんの総合診療医」なんだよ、と伝えるようにしている。
いまのこの「がんの時代」において、がんの診療に薬物治療はどうしても欠かせない。がん患者さんの命を伸ばし、QOLを改善しているのは、薬物治療なのだから。

われわれが診療科で日々がん患者さんに行っている診療内容そのものが、学生・研修医諸氏が医師となったときにきっと役立つ知識であり経験となる。これは、間違いない!病歴の書き方、PS身体所見の診方、コミュニケーションの取り方など医師国家試験にパスすること以上に大切なことを、今週の5・6年生にも伝えたところ。
馴染みやすい、わかりやすい、誠実をモットーに、当医局では、今後一層学生との対話をふやし親しみやすい雰囲気、空間や教員であることをここに宣言したい。

医局内の様子
DeLonghi自動豆粉砕機




2021.06.10
最近の当科の診療事情 トピックスについて

入院診療を開始して5年。
いまや入院患者数は増加。4床の定数のところ常に平均6~8床を維持している。 胃癌・膵癌などをはじめ進行・再発の消化器癌が中心に、最近では院内から非常に多くの軟部肉腫といわれる平滑筋肉腫や血管肉腫をご紹介頂いている。軟部腫瘍は、従来手術治療が唯一の治療法であった。転移や再発を繰り返すと外科では対処できなくなり、どうしても薬物治療が治療の中心となる。当科が入院治療での対応が可能となったこと、われわれがん薬物治療医がその対応にあたることが可能であること、ここ数年保険で認められた数種の新規抗がん薬の登場があったことなど、われわれのようにがん専門の薬物治療医の存在とその役割がこれら軟部腫瘍(肉腫)等にも非常に増してきたことも患者数の増加の背景になっていると思う。
そんな中、当科で特筆すべき経験をした。骨肉腫の薬物治療である。

当科としてはもちろん、当院でも初となる治療経験となった。その治療遂行にはチーム医療の存在も大きく貢献している。歯科口腔外科で診断された局所進行例で、術前の薬物治療でうまく縮小が得られれば根治切除が可能と判断した。そこで術前に抗がん剤治療(当科が担当:葛西助教)が開始された。幸い選択したレジメンでの薬物治療が功を奏し非常に縮小化が得られ、歯科口腔外科にて無事根治切除が行われた(遺残なし、リンパ節転移なし)。また美容上の再建にも優れた技術を持つ当院形成外科にて、植皮を含む再建も追加実施された。
骨肉腫の薬物治療は、その施行には少し専門性が高い。薬物の血中濃度を頻繁にチェックする必要があり、一般の抗がん剤治療より手がかかる。それぞれの専門を活かしたこれら切れ目ない専門家によるチーム医療により、患者さんは合併症なく経過され、非常に元気である。まもなく術後補助薬物治療が終わり集学的治療が完遂することになる。

こうした経験は、当科を含め、当院での治療実績としても大きな自信になり、病院の財産となったと思う。患者さんから信頼され感謝される医療の提供、これこそがいつの時代も続く、医療者の望む本質ではないか。今後も少しづつ症例を増やしていきたい。





2021.05.30
夜の散歩にて  ― mRNAワクチンは、世界を救う!? ―

新型コロナウイルス感染の影響で、街は静まりかえっている。夜ならば、尚更である。 浅野川沿いの東山界隈の夜道をただゆっくりと散歩しながら、梅の橋や浅野川大橋の夜景をカメラに収める。これらのいつもと変わらない景色を見ると、1年以上続く閉塞感をふと忘れる一瞬がある。しばし添付の写真を見て心を和ませてほしい(下写真)。

梅の橋と浅ノ川大橋

私も2回接種させて頂いたファイザー製のワクチンは、海外の接種結果から変異ワクチンにも非常に効果があるらしい(感染予防効果は88%)ことが、新聞記事にあった(日経5月30日付)。感染力が特に強い「インド型」にも効いているとのことで有難いことこの上ない。ただ、1回だけの接種では効果が不十分なので、2回接種が原則で重要とのこと。
ファイザー製やモデルナ製もmRNA型ワクチンといわれ、身体の中に入って細胞内でウイルスに関連する様々な蛋白を産生させる能力があり、これらの産生蛋白を感知する免疫系細胞が変異型を含め新型ウイルスの攻撃を防いでくれる原理のようだ。
このワクチンの開発には、カタリン・カリコという米国とハンガリーの2重国籍をもつ生化学者が主な役割を果たしているという。彼女は、ハンガリーの大学を卒業後に一旦地元の企業に就職したがその後渡米。渡米の際には、娘のクマさんのぬいぐるみに全財産を縫い込み持ち出したというエピソードもお持ちらしい。その後RNA研究を40年間継続していたが研究費用が底をつき、2013年にドイツの企業ビオンテックに移動。
苦難の連続の中で、彼女は、下図にある塩基の1つ「ウリジン」の置換で炎症反応が抑えられ壊れにくいことを発見、今回のmRNAワクチン開発につながったとのこと。彼女とこの甚大なる感染症との戦いの最前線で奮闘して下さる医療者の方々にノーベル賞の授与を願うばかりだ。

mRNAワクチンの仕組み

また、彼女は、「物事が期待通りに進まない時でも周囲の声に振り回されず、自分ができることに集中してきた。」と述べている。
mRNAワクチンによる新型ウイルスの克服への希望、研究における自身の信念を曲げることなく持ちつづける希望、これらの信念の希望をわれわれも大いに見習って、歩んで行きたいとひとり静かに今夜も思うこの頃である。





2021.04.30
ついに病棟の患者さんが、12人を超えた。

入院患者さんの内訳は、
初回治療導入のため、がん薬物治療中で治療効果が芳しくなくなり薬剤を変更するため、短期での入院での抗がん剤治療を繰り返すため、がんの疑いでその精査のため、転移巣のみで転移をおこした元の臓器がはっきりしないため原発巣検索中など、幅広くがんの診断治療を活発に積極的に行っている。
院内はもちろん、能登地区をはじめとした院外の紹介患者さんの増加が背景にある。
当科の入院治療は実はまだ始まったばかり。5年前からのことである。当方もこちらの施設に来て6年。本格的導入は、葛西助教の当科仲間入りが、なんと言っても大きい。充実したがん医療を進めているので、是非ともがん医療に興味のある若手の仲間入りを期待したい。

希少がんの医療は、決まった治療法が乏しく難しい。平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、血管肉腫、脂肪肉腫など希少がんである軟部腫瘍の治療数もここ1-2年の間に大幅に増え、骨肉腫症例では他科との密接な連携から手術治療を含む予定通りの集学的治療で患者さんも満足いく大きな成果をあげており、実際過去3年間でこれら希少がんの治療数と20例を超えた。

最近では、がんの遺伝子パネル検査を当科専門外来で扱うことになり、医科大のがんゲノム医療を遺伝外来の新井田 要先生とともに推進している。最近知名度も上がり、問い合わせも一層増えてきた。
「社会を幸せで満たす」を信念に、がん医療のさらなる充実を目指していこうと思う。

入院症例カンファレンスの模様