入局案内

学生および研修医の皆さまへ

わが国のがん対策とがん専門医療人の育成

 日本人の死因の第1位はがん、悪性腫瘍が占め、3人に1人はがんで亡くなっており、第2位の心疾患以下を大きくひき離しています。実際年間37万人もの方が、がんで命を落としているのが現状です。乳癌や前立腺癌などは最近急激にその罹患数が増え、死亡率ともに増加傾向にあります。そこで、国はこの実状を踏まえ、「研究」・「予防」・「医療」の総合的推進から、わが国のがんの死亡率や罹患率の激減を図るために、2006年「がん対策基本法」を制定し、がん医療では標準化による「均てん化」を主な戦略としました。この法制化で、全国の各都道府県に1つがん診療連携拠点病院が整備され、がん薬物療法の推進、専門的な知識や技能を有する医師やその他の医療従事者の育成が強く求められるようになりました。また同時期に、文部科学省の公募事業「がんプロフェッショナル養成プラン」がスタートし、がん医療の新たなニーズに対応可能な優れた「がんの専門医療人材(がんプロフェッショナル)」を養成することでわが国のがん医療の一層の推進を目的とした事業として実施展開されています。北陸地域においても、当初「北陸がんプロ」として、金沢医科大学も金沢大学、富山大学、福井大学、石川県立看護大学の5大学と連携しその医療人材育成を進めてきました。2017年からの第3期の「北信がんプロ」では、信州大学を加えた6大学で北陸地域を越えた北信地域での優れたがん医療人を育成するシステムの構築がなされています。

学会が進める、がん専門医の育成

日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医

 日本医学学会においては、まず2002年に日本臨床腫瘍学会が設立。分子標的治療薬の登場もありがん薬物療法は大きく様変わりを遂げつつある時期で、翌年2003年に「臨床腫瘍専門医制度」が設立され、2020年3月現在までに全国で1,400人が、がん薬物療法専門医に認定され、がん薬物療法の専門医療人として全国各地で活躍しています。

日本がん治療認定医機構 がん治療認定医

 また、がんの医療人を育成し全国どこでも一定レベル以上の治療が受けられる体制の確保と、2005年に日本医学会より提言された「がん治療に関して認定医と専門医の2段階性とする」構想の第1段階を担う制度の確立を目的に、2006年日本癌学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会の3学会と、全国がん(成人病)センター協議会の計4団体の連携により「日本がん治療認定医機構」が発足し、2008年より認定が開始され、2017年4月現在までに、15,342名が認定医となってがん医療のさらなる充実に努めています。
 当教室からも、これまでに2名の日本臨床腫瘍学会が認定するがん薬物療法専門医を輩出しています。臨床腫瘍学分野は、がん医療を臓器横断的に包括する学問領域です。金沢医科大学病院では診療科名を「腫瘍内科」として、消化器系がんをはじめ、骨軟部悪性腫瘍、原発不明がんなどの稀少がん、進行難治性がんなど様々な固形腫瘍の薬物療法を行っています。今後ますます将来的にも分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬などの新規薬剤の登場、新たな薬剤同士の組合せ効果の発見等からがん患者の予後は確実により良好となってきています。社会的ニーズの高い本がん薬物療法領域のさらなる必要性と研究開発によるさらなる飛躍が待ち受けていると確信しています。こうした社会に必要とされるがん専門医療人の臨床腫瘍医、腫瘍内科医の育成に力を入れています。がんの薬物療法に興味を持っている将来性豊かな若い人材を歓迎いたします。

腫瘍内科初期研修

自由選択研修における研修内容

定員2名
指導体制教授1名
到達目標がんの診断から治療、緩和までがん患者の最適な医療における治療方針が立てられるようになる。とくにがんの薬物治療において、その施行、起こりうる副作用対策、基礎合併疾患の管理、進行がんの合併症対策など、全身的に全人的に患者さんのQOLを重視したがん医療を体得する。さらに高齢がん患者さんや多くの基礎疾患をもったがん患者さんの社会心理的支援や終末期医療など様々ながん医療に関わる豊富な経験をすることで、がん医療におけるチーム医療の重要性を理解しがん専門医療人としての素養を身につける。
研修内容および方法

具体的な習得内容

  • 消化器がん化学療法の治療計画
  • がん薬物療法に伴う副作用対策
  • がん薬物療法による効果判定
  • がん治療における緊急処置
  • がん性疼痛対策
  • 地域医療、在宅医療に向けた連携、社会資源の理解

参加する活動内容

  • 診療グループの一員としてがん薬物療法に参加。内視鏡検査やエコー検査等に参加し検査の意義や実際の手技を学ぶ
  • 薬物治療前後の画像での抗腫瘍効果判定
  • 中心静脈カテーテル埋込の手技を術者・助手として参加
  • 腹水穿刺排水の手技を術者・助手として参加
  • 症例カンファレンス(自科、他科との合同)への参加  など