皮膚真菌症は、有病率が国民の4割にも達する最もcommonな皮膚疾患のひとつであり、その診療は皮膚科業務の中でも大きな割合を占めています。本症の診断法や診療のコツは、従来大学の医局において先輩医師から後輩へと伝授されていました。しかし、近年の免疫学や皮膚生物学の急速な進歩にともなって皮膚科学者の興味が放散し、真菌症自体が研究テーマとして取り上げられることは少なくなっています。そのためか、研究とは異なる次元であるはずの真菌症の診療のための教育が軽んじられてきた印象があります。
さて金沢医科大学皮膚科学講座では1988年より毎年1回若手皮膚科医を対象とした真菌講習会を開催し、皮膚真菌症の診療を行う上で最低限知っておいてもらいたい技術、知識の伝授をおこなってきました。この間にTrichophyton tonsurans感染症のout breakが起こり、その対策を求められるなど皮膚科医が求められるものも様変わりし、診療内容も変化してきました。そこで、多忙などのために金沢まで来ていただけない若手皮膚科医の皆さんのために能動的学習の媒体としてe-learningの教材を作成し、2017年に公開しました。今回は作成後4年が経ちますので、臨床実習に臨む医学部学生諸君にも利用できるように一部内容を見直し、改訂したものを公開することにしました。
この教材をもちいて自学自習を進めることで皮膚真菌症への理解が深まり、より適切な診療が行われることを期待しています。
この教材の編集にあたっては国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)に全面的な助成を受けています。(課題番号 JP20fk0108094)