金沢医科大学 血液免疫内科学 主任教授就任のご挨拶
- 平成27年3月16日付けで血液免疫内科学の主任教授を拝命いたしました。
私は平成元年に当学を卒業し当学で臨床研修を行い、その後に血液免疫内科学教室へ入局しました。当科を選んだのは血液疾患と膠原病の両方を診れる医師になりたいという想いがあったからです。
私の主な仕事は、シェーグレン症候群から発生する悪性リンパ腫の臨床研究、予後不良の血管内悪性リンパ腫や中枢神経原発リンパ腫に対する新しい治療法の開発、21世紀に入り日本より発信された新たな疾患概念;IgG4関連疾患の臨床研究、別の新しい疾患概念;TAFRO症候群/特発性多中心性Castleman病の全国的調査研究のまとめ役などです。ご協力いただいた当教室の先輩・後輩、ならびに多くの症例をご紹介いただいた学内外の先生方に深謝いたします。
さて、ここ数年の当学の国試合格率は非常に向上しており、その結果大学の入試倍率も上がり、さらに卒業生の当大学病院マッチング率も上がり臨床研修医も年々増えてきております。この上昇気流を途絶えさせないように、学生と研修医を教育しリクルートし続ける必要があります。
血液免疫内科学教室を発展させることは勿論ですが、大学全体の活気をつけ、金沢医科大学生として、あるいは当学の卒業生として誇りに思える大学となるように、心血を注ぎたいと存じます。今後とも宜しく御指導をお願い申し上げます。
正木康史 記
正木康史 略歴昭和40年3月5日生
平成 元年 3月 金沢医科大学医学部卒業 平成 元年 5月 金沢医科大学病院研修医(平成3年3月まで) 平成 3年 4月 金沢医科大学助手「血液免疫内科学」(平成11年8月まで) 平成 7年 1月 米国スクリップス研究所免疫学Dr.Burton DR研究室へ留学(Visiting scientist)(平成8年12月まで) 平成 11年 9月 金沢医科大学講師「血液免疫内科学」(平成19年3月まで) 平成 19年 4月 金沢医科大学臨床准教授「血液免疫制御学」(血液免疫内科学)(平成27年3月まで) 平成 27年 3月 金沢医科大学教授/講座主任(金沢医科大学医学部血液免疫内科学)(現在に至る)
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金沢医科大学血液免疫内科学教室は、1974年9月本院開学時に紺田進教授(初代)、吉田弥太郎助教授(前京大教授)、滝口智夫助教授(2代教授)、菅井 進講師(3代教授)、小中義照講師(大阪北野病院)、栗林影容助手(三重大教授)、宮坂昌之助手(大阪大教授)、廣瀬優子助手(教授)でスタートした。以来、多くの医師の入局、異動があった。
本学出身者の入局は澤田 信、荒井秀俊、橘 順子、福徳雅章、竹下昌一、竹内洋子、松浦利津、小川淑美、岡田 順、金 昌基、唐澤博美、下山美子、澤木俊興、三木美由貴、中島章夫、中村拓路、佐藤智美の各先生で、現在は病院勤務、開業などそれぞれの道で頑張っている。
2015年3月に正木康史教授が主任教授に着任し新体制が始まった。さらに2015年7月に福島俊洋が特任教授に着任、2016年7月に川端 浩が特任教授に着任し、臨床・研究・教育に尽力する体制が整ってきた。医局員としては1999年4月より藤田義正准教授、2006年4月より坂井知之講師、2007年4月より岩男 悠助教、2015年10月より藤本信乃助教(大学院生)が入局した。一時期より人数は減ったものの、現在のメンバーは皆パワフルでやる気があり、お互いに助け合ってフル稼働している。
診療は血液疾患としては悪性リンパ腫、白血病、多発性骨髄腫が多く、化学療法や支持療法、造血幹細胞移植などの進歩により、予後やQOLが格段に改善されてきている。膠原病・自己免疫疾患としては関節リウマチ、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、血管炎症候群などを主に外来にて診療しているが、これらの多くは難病であり病歴も長期間におよぶため、きめ細やかな診療を心がけている。また、福島特任教授を中心として地域連携にも積極的に取り組んでおり、希少疾患といえる血液疾患や膠原病・自己免疫疾患の診療を、数少ない血液・膠原病専門医が北陸の地で以下に効率良く診療するか、日々の努力を続けている。
研究では、正木教授を中心とした「新規疾患:TAFRO症候群に関する臨床研究」、「IgG4関連疾患に対する治療研究」、「血管内リンパ腫、中枢神経リンパ腫など難治性リンパ腫に対する治療研究」、藤田准教授の「全身性自己免疫疾患における肥満因子レプチンに関する研究」、河南崇典講師の「プロテオミクスの手法を用いたIgG4関連疾患特異的に変動するタンパク質の機能解析」、「メタボロミクスによるIgG4関連疾患の炎症の発生と収束にかかわる脂質メディエーターとそのバランス制御」などが行われている。この度加わった川端特任教授による「造血障害や炎症性疾患における鉄代謝」の研究も今後進んでいく予定である。
教育に関しては、5・6年生のCCSおよび臨床研修医を含め、積極的に診療に携わるメンバーとして扱い、その中で教育を行っている。医師となるための基本的知識と手技、患者に対する態度を、診療行為に立ち会う中で学び、上級医が研修医に、研修医が学生に教えることで、より身近な先輩から学べるように工夫している。内科医として議論に耐えうるプレゼンテーションの仕方を、時間をかけて教育している。
新たな疾患概念や新規治療の多くは、血液疾患や免疫・膠原病の分野から生まれることが多い。多くの若人たちに興味を持ってもらい、われわれの仲間になっていただきたい。入局はいつでも大歓迎である。
(血液免疫内科学 正木康史記)