02/12/26
Vibrio vulnificus の海水中からの検出方法について
 【質問】
 当試験所においては, 海水をメンブラン・フィルターで吸引集菌後, アルカリペプトン水で増菌し, TCBS, CPC, クロモアガー・ビブリオで選択しています。

  時々, 3つの選択培地共に対象外菌の増殖が多く, 対象菌を釣菌できないときがあり, 検出精度の低下をきたしています。PCR法で因子を検出したものについてのみ選択を繰り返すやり方が効率が良いと聞いたことがありますが, 試験所にはPCR法の機器がありません。それではどのようにしたら確実に (1 cfu/100 ml), 効率良く検出できるのでしょうか。よろしくご教示を頂きますようお願いします。

【回答】
 臨床材料からの菌検出を専門としていますので, 環境材料からの検出法についてはよく分かりませんが, いくつかの文献ではV. vulnificus の分離方法は基本的に質問者の記載されている方法と同じです。しかし使用する培地が若干異なりますので, 以下の培地で検討してはいかがでしょうか。

[検出方法]
1. 海水500 mlをミリポアファイルターで吸引集菌
2. 0.08%セオビオース, ポリミキシンB加アルカリペプトン水50 mlで18時間増菌培養
3. コリスチン加セオビオース寒天培地で分離培養
4. 黄色集落を釣菌して菌種同定

 上記以外の増菌および選択培地として熊本県公害研究所で開発された培地があります。

SGP 増菌培地: ゼラチン 10 g, 可溶性澱粉 10 g, NaCl  20 g, ポリミキシンB  15万単位 (18.89 mg ), 蒸留水 1,000 ml

SPS 選択分離培地: プロテオーゼ・ペプトン 10 g, 肉エキス 5 g, サッカロース  15 g, ラウリル硫酸ナトリウム 1 g, NaCl  20 g, ポリミキシンB  10万単位 (12.59 mg ), ブモールチモールブルー 0.04 g, クレゾールレッド 0.04 g, 寒天 15 g, 蒸留水 1,000 ml  (寒天培地上でV. vulnificus はハロを形成します)

 ご質問では, 選択培地に対象菌種以外の菌種発育を認めるとありますが, 臨床検体でも同様な現象は観察されます。対象菌種のみ発育する培地は一見有用に感じられますが, 選択力が強いということは逆に対象菌種の一部が発育できない可能性も考えられます。選択力の強い培地と若干劣る培地を組み合わせて使用するようにしております。

(琉球大学・仲宗根 勇)

[戻る]