03/04/14
■ アクチノマイセスは炭酸ガス培養で発育できる???
【質問】
 アクチノマイセスについて質問させていただきます。以前, 口腔内の膿から分枝した陽性桿菌がCO2培養下で血液寒天培地に発育しました。アクチノマイセスを疑ったのですが, 教科書には嫌気性菌と書かれています。CO2炭酸培養では発育しないのでしょうか??? もし発育可能であれば, 血液寒天培地のコロニーの特色と同定法を教えてください。よろしくお願いします

【回答】
 口腔内の膿から分枝した陽性桿菌についての質問ですが, おそらくActinomycesでしょう。Actimomyces spp.は, A. myeriなど, 偏性嫌気性である一部の菌種菌株を除き, 大部分は通性嫌気性菌です。炭酸ガスを好む性質があります。血液寒天培地に炭酸ガス培養で発育したこの菌はActimomycesの可能性が高いと考えられます。Actinomycesは, 培養時間を長くすれば, 血液寒天培地で炭酸ガス培養をすれば発育するものが多いようですが, 炭酸ガスが5〜20%となる嫌気培養のほうが好んで用いられます。なぜなら, 発育がより良好なものが多いからです。

 さて, 嫌気性菌用血液培地で嫌気性培養したActinomycesの集落は, 3日くらいで赤色または黒色に着色するもの (A. odontolyticus), 臼歯状の集落を作るもの (A. naeslunndii, A. israelii), そして正円の不透明の集落 (A. myeri) など, いくつかの集落型があります。またBHI寒天培地, GAM寒天培地など血液寒天として使用しない透明〜半透明の寒天培地で純培養して, まだ集落が肉眼でははっきり見えない時期 (一夜培養で) に培地表面を低倍率の顕微鏡で拡大して見ると通常の細菌は大きく成長した時と同じく正円に見えるのですが, あるActinomycesは糸状菌のようにクモ (spider) 状に見えてくるものがあります。これはA. naeslunndii, A. israeliiに特徴的な所見として有名です。同定は, 嫌気性菌用のキットを使ってみて下さい。本菌群の分類はまだ不完全です。表現型の性質のみでの同定は難しく, 代謝産物 (コハク酸, 乳酸) の同定が必要となる場合が少なくありません。最近の論文をみると, 遺伝子を指標とした同定の試みが行われています。

(岐阜大学・渡邉邦友)

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