03/02/10
■“アミノセファロスポリン酸発酵”ってなに???
【質問】
 “アミノセファロスポリン酸発酵”ってどのような反応なんですか??? 自分でも調べたのですがいまいち良い資料がありませんでした。

【回答】
 αアミノ基やカルボキシル基をもつセファレキシン (CEX) やセファクロ−ル (CCL) などのアミノセファロスポリン剤が見いだされたのは, 今から半世紀程も前の1950年代の前半のことです。

 Cephalosporium acreminium の培養液から分離された初期の cephalosporin Cのナトリウム塩は, 260mμ (Emax 9,500) に紫外線極大吸収を示し, 酸性環境下でもpenicillin(s) に比べて極めて安定であり, 経口投与も可能なものでした。このcephalosporin C の化学構造は化学的分解やX線解析によって決定され, 母核である 7-aminocephalosporinic acid  (7-ACA) の7位のアミノ基にD-α-aminoadioic acid が結合しているものです。なお, β-lactam 環の水素配位は penicillin と同様に cis 型をとっています。7-ACA 自体は抗菌活性は認められないのですが, 種々の化学的処理により抗菌力をもつようになるので, cephalosporin(s) の重要な出発原料であり, cephalosporin C の化学的分解または直接に微生物から得ることが出来ます。

 cephalosporin C の生合成に関しては, penicillin と同様に化学的な合成経路が示されるに及んでいますが, 最近 Xanthmonas 属菌由来のaminocephalosporin synthetase を用いたセファレキシン (CEX) やセファクロ−ル (CCL) などのaminocephalosporin の enzymatic synthesis に関する報告 (1) がなされています。質問者の意味する“アミノセファロスポリン酸発酵”とは, aminocephalosporin synthetaseによる生物学的なaminocephalosporin の生合成に関することでしょうか??? だとすれば, 下記の論文を紹介いたします。また, 新刊図書として ASM (米国微生物学会) から出版される書籍 (2) を推奨いたします。本書籍は 340頁から構成されているもので, 2003年2月15日付けで米国微生物学会の ASM Press から出版されるものです。本書籍の Section IV に記載されている“抗生物質の生物学的生合成”に関する記述が参考になると思います。

[参考文献]
(1) Kurochkina VB, Nys PS: Enzymatic synthesis of beta-lactam antibiotics. II. Aminocephalosporins. Antibiot. Khimioter. 44: 6〜11, 1999.
(2) Antibiotics: Actions, Origins, Resistance., Christopher Walsh, Harvard Medical School, ASM Press (2003).

(信州大学・川上 由行)

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