04/01/15
■ ATCCの大腸菌について
【質問】
 はじめまして。[http://www.jarmam.gr.jp/situmon/]の方を拝見し, メールさせて頂きました。

 除菌性能の評価をしたいと思い, 文献などを検索しておりますと, 大腸菌でATCC 11229を用いた例がみられ, ATCCのホームページでもApplicationsでtesting disinfectants, testing sanitizersなどが示されています。そこで質問なのですが:

(1) このようなアプリケーションの目的で, ATCC 11775を利用することは可能でしょうか??? (ATCCのホームページのApplicationsはquality control strainとなっています)

(2) そもそもATCC 11229とATCC 11775の大腸菌の特性の違いはどのようなものでしょうか???

 ATCCの方に問い合わせたのですが, 明確な回答が得られませんでした。専門外なので, 的外れな質問やもしれませんが, ご回答のほどよろしくお願いします。

【回答】
 質問の, “除菌性能を評価したい”という使用目的からすると, Escherichia coli ATCC 11229の代わりに ATCC 11775を“代用する”ということはしないほうがよいと考えます。その理由は, ATCC 11229は, 消毒, 除菌, 手洗いなど, 衛生環境の評価にもっとも広く, 標準として使用すべき菌株に指定されているからです。ATCC 11229をこの種の試験評価に用いるように指定している機関には, American Society for Testing and Materials (ASTM: http://www.astm.org) やAssociation of Analytical Communities (AOAC: http://www.aoac.org) など, 世界的な標準化を進めている組織があります。もし, 公的にも, 世界的にも通用する試験結果を求めるのであれば, 菌種名が同じだからといって, 安易に他のATCC菌株を代用すべきではないと考えられるからです。

 他方, ATCC 11775は大腸菌, Escherichia coli の“Type strain”です。ヒトの尿から分離された経緯もあって, 臨床細菌学の領域でしばしば登場する菌株です。ATCC 11229については詳しくは知りません。ただ注意して欲しい点は, 同じ菌種名であっても, すべての菌株は個々に異なるものであるということです (同じ人間でも, 個々にその顔立ちや性格が違うように)。まずは, 目的に合致するASTMやAOACの勧告文書を入手されては如何でしょうか。

(琉球大学・山根 誠久)

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