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【質問】
初めて質問させていただきます。病院勤務の臨床検査技師です。グラム染色についてですが,
当院ではバーミー法を採用しています。バーミー法とハッカー法の違いとそれぞれの特色を教えてください。よろしくお願いします。
【回答】
グラム染色B&M法は, これまでのHucker変法に比べ特別な熟練を必要とせず,
陽性・陰性が明瞭に判断でき, しかも個人差の少ない染色法です。操作は, メタノールなどにて固定した塗抹標本に1%クリスタルバイオレット水溶液を満載し,
直ちに5%炭酸水素ナトリウム水溶液数滴を滴下 (この媒染操作が特徴), このまま30秒間染色後,
水洗。次いで2%ヨウ素水酸化ナトリウム溶液を満載して30秒間作用させ, 水洗。脱色はアセトン・エタノール等量混合液を用い素早く
(数秒) 行い, 水洗。最後はパイフェル液にて数秒間染色し, 水洗。乾燥, 鏡検します。B&M法はHucker変法
(クリスタルバイオレット前染色1分, 水洗, ヨウ素ヨウ化カリウム溶液1分作用,
水洗, アルコール30秒脱色, 水洗, サフラニン30秒後染色, 水洗, 乾燥, 鏡検)
に比べ操作が1ステップ多いものの, 全体の染色時間は短く, 検体の直接染色そして培養菌の染色ともに良好な染色像が得られます。私達は同一材料を用いB&M法とHucker変法とを比較しこれを実証してきました。また多くの施設でB&M法が利用され,
(1) グラム陽性・陰性の判断が容易であった, (2) 白血球内の貧食像が観察しやすかった,
(3) 菌株のグラム染色性を迷わなかった, (4) Haemophilusなど難染色性菌が見やすかった,
(5) 染色手技の熟達はいらない, などの意見が寄せられました。
現在バーミーをお使いとのことですが, B&M法の市販品には次のものがあります。
(1) グラムセット・バーミー (武藤化学薬品株式会社))
(2) グラムセット・バーミーM (武藤化学薬品株式会社)
(3) グラム染色・B&M山中変法 (メルク・ジャパン株式会社)
(4) グラム染色液・B&Mワコー (和光純薬工業株式会社)
(5) グラム染色液・neo-B&Mワコー (和光純薬工業株式会社)
このうち(2) のバーミーMと(5) のneo-B&Mワコーは炭酸水素ナトリウムを省略したものですが,
バーミーMは染色性が悪く, グラム陽性・陰性の判断に苦慮する場合があります。詳細な内容を記述できませんので,
以下の論文をお読みください。
(1) 山中喜代治: グラム染色 メBartholomew & Mittwerモ を試そう. 日本臨床微生物学雑誌
3: 21〜26. 1993.
(2) 山中喜代治: 迅速検査としてのグラム染色 Bartholomew & Mittwer (B&M)
染色法を中心に. Med Technol 23: 205〜213, 1995.
(3) Batholomew, J. W. and T. Mittwer : The Gram stain. Bacteriol. Rev.
16: 1〜29, 1952.
(4) 湖城明子他: 改良グラム染色液neo−B&Mワコーと自動染色装置 POLYSTAINERを用いたグラム染色検査の実用性について.
医療と検査機器・試薬. 25: 455〜465, 2002.
(5) 山中喜代治: グラム染色. JARMAM 12: 81〜90, 2002.
(大手前病院・山中喜代治)
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