update:03/08/12
03/08/13 |
【質問】
私は食品製造会社で微生物検査を担当している者です。Bacillus brevis
について調べているのですが, 手持ちの書籍では分かりませんでした。そこで,
この菌の生育至適条件,栄養要求性,耐熱性,どのような場所に生息しているのかなど,
基礎的な性状について教えて下さい。よろしくお願い致します。
【回答】
Bacillus brevis についてのご質問にお答えする前に, 本菌種の分類学的事項の概略について触れさせていただきます。本菌種は
Migula, W. (1) によって1900年に報告されたのが最初です。その後, 本菌種の不均一性が指摘され,
本菌種は表現形質からGroup 1・Group 2・Group 3a・Group 3b および Group 4
に分類され(2), さらに遺伝学的形質の差から DNA group A〜F の6 DNA グル−プに分類されました(3)。そして1996年には,
従来の Bacillus brevis は, 新しく提案された Brevibacillus属の一菌種として
Brevibacillus brevis として記載されております(4)。従って, ご質問の菌種を
Brevibacillus brevis に置き換えてお答えさせていただきますと, 生育至適条件としてはpH
5.6 という酸性環境でも発育可能ですが, 発育至適はpH 7.0で, 50℃の高温でも発育可能ですが,
至適温度は37℃です。特別な栄養要求性はなく, 5%NaCl で発育が抑制されます。また芽胞をもつため耐熱性で,
100℃, 数分の加熱では死滅しません。滅菌には一般的な高圧滅菌処理 (121℃で15〜20分間)が不可欠です。それ以外の性状などについてはIJSEB
(International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology) のホ−ムペ−ジURL「http://ijs.sgmjournals.org/」から下記の論文を検索してお読み下さい。
Abstract や PDF 形式で論文の全文を読むことが出来ます。
-
Migula, W.: System der Bakterien. Vol. 2. Gustav Fisher, Jena, 1900.
-
Nakamura, L. K.: Bacillus brevis Migula 1900 Taxonomy: Reassociation
and base composition of DNA. Int. J. Syst. Bacteriol. 41: 510〜515, 1991.
-
Takagi, H., et al.: Characterization of Bacillus brevis with descriptions
of Bacillus migulanus sp. nov., Bacillus choshinensis
sp. nov., Bacillus parabrevis sp. nov., and Bacillus
galactophilus sp. nov. Int. J. Syst. Bacteriol. 43: 221〜231,
1993.
-
Shida, O., et al.: Proposal of two new genera, Brevibacillus gen.
Nov. and Aneurinibacillus gen. Nov. Int. J. Syst.
Bacteriol. 46: 939〜946, 1996., Erratum in: Int. J. Syst. Bacteriol.
47: 248, 1997.
(信州大学・川上 由行)
【質問者からのお礼】
丁寧なご回答ならびに文献のご紹介をありがとうございました。御礼を申し上げるのが遅くなりまして,
申し訳ございません。
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