そこで, Bacillus maceransですが, バイオ専門の企業からは, 一般細菌で, 納豆菌の一種で, 人体に害はなく, 臭いを分解する働きなどもあるとの回答を受けたのですが, ホームページ等で検索すると「日和見感染を起こすもの」等の記載がありました。また堆肥などにも存在するということですが, その特性, および人体への影響, どのような働きをするのかなど, 回答いただければと思います。

　突然のメールにて申し訳ありませんがご回答のほど宜しくお願い致します。

【回答】
　回答致します。医学の領域で細菌を取り扱う者として“Bacillus macerans”という細菌は極めて馴染みのない細菌です。むしろ工業, 化学, 環境の領域で細菌を取り扱う方が専門とされています。その意味から, Bacillus macerans の研究の多くはcyclodextrin glucanotransferaseという酵素に関するものがほとんどです。

医学領域に限定して回答しますと;

(1) まず, すべての細菌微生物はヒトに日和見感染を起こすことができると考えて下さい。

(2) しかし, Bacillus maceransを通常の病院検査室で取り扱ったことがあるかというと, 答えは“NO”です。おそらく, Bacillus maceransという細菌を同定することすら極めて困難であると思います。それほど, 医学領域では取り扱うことはないのです。

　一応, 下のような症例報告の文献があります。教科書にも菌血症, 敗血症の原因になるとも記載されていますが, その頻度は極めて, 極めて稀です。Loganの総説 (3) によると, メラノーマ切除に続発した創傷感染1例のみであったと記載されています。

　Bacillus maceransは発育に伴い, 炭水化物からアセトンとエタノールを産生しますので, 魅力のある細菌と言えるでしょう。

［文献］

(1) Barrero F, Galan F, Marin P, Garcia-Martos P, Capote FJ: Catheter associated infection by Bacillus macerans in a patient with acute leukemia. Enferm Infecc Microbiol Clin, 14: 628〜629, 1996.

(2) Bert F, Ouahes O, Lambert-Zechovsky N: Brain abscess due to Bacillus macerans following a penetrating periorbital injury. J Clin Microbiol, 33: 1950〜1953, 1995.

(3) Logan NA: Bacillus species of medical and veterinary importance. J Med Microbiol, 25: 157〜165.