04/08/04
04/08/06
■ バシラス・セレウス菌陽性の学生が介護体験を拒否された
【質問】
 たまたまこのHPを見つけ, メールいたします。当方, 某大学の保健管理室に勤務する臨床医です。夏休み, 学生が老人施設で介護体験をするにあたり, 便中の細菌培養検査が必要なのですが, その中でBacillus cereus 1+の学生が数名おりました (本来の目的菌は, サルモネラと病原性大腸菌のみです)。検査伝票のコピーを添付したところ, 受け入れ先の施設が「このような学生を送ってもらっては困る」と大学側に抗議してきたとの相談を保健婦より受けました。学生本人はいたって元気ですが, 抵抗力の低下した老人の介護にあたっては, やはり食中毒などの原因となりえるのでしょうか。今後, 同様の結果がでた学生に対してどのように説明すればよいか, ご教示いただけましたら幸いです。

【回答】
 大変, 難しい問題です。最近では, 医学部の学生もありとあらゆるワクチンを予め接種しておかないと病院での実習や研修を受け入れないという施設がどんどん増えています。過度の責任が求められ, 過度に反応している昨今の時勢でしょう。

 Bacillus cereus は御存じのように, 食中毒菌のひとつですが, 自然界には広く分布しており, 食品の腐敗菌としてよく知られています。ほとんどのヒトは腐敗した食品に触れたことがある筈です。その細菌が糞便検査で見つかったからといって, 介護体験を拒否されたというのはちと行き過ぎのように感じます。ただ, 食中毒の原因にまったくならないかというと, その可能性は, 介護体験の内容にもよるでしょうが, まったくないとも言い切れません。そのような学生を拒否するか否かは, 受け入れ機関の決定することです。ダメだと言われれば, それを受け入れるしかないでしょう。今後の対策としては, 理解のある受け入れ施設をみつけるしかないと考えます。あるいは, 検査が求められている「サルモネラと病原性大腸菌は陰性であった」という報告書式とし, その他の不必要な情報 (今回のBacillus cereusなど) は記載しないという書式を整えるか・・・

(琉球大学・山根 誠久)


【質問者からのお礼】
 早速のお返事をいただき,有り難うございます。やはり難しい問題があるとのこと,了解いたしました。
 最近,菌種は違いますが, 似たような件がいくつかあり,とりあえず学生には,“先方には結果を送り,その上でクレームがあった場合は再検査の可能性がある (あるいはその施設は諦める)”との連絡をいたしました。大学の健康管理業務は,臨床とは違う知識が必要なことも多く,大変参考になりました。今後ともよろしくお願い申し上げます。


[戻る]