03/12/26
■ 培地の菌種による発色
【質問】
 初めまして。私は化学科の学生です。初歩的な質問で申し訳ないのですが, PGY培地 (ペプトン+グルコース+酵母エキス+寒天+蒸留水), リン酸寒天培地で特定の菌のコロニーが発色する原理を教えて下さい。ちなみに実験では, PGY培地では黄色とピンクのコロニー, リン酸寒天培地では白・黄色・ピンクのコロニーが見られました。

【回答】

 寒天培地上のコロニーが発色する原理としては大きく3つ考えられます。ひとつはpH指示薬と基質を含む培地で発色する場合であり, ふたつ目は発色合成酵素基質を含む培地で発色する場合です。前者の例としては, 大腸菌群用としてのデゾキシコレート培地 (DC培地) があげられます。DC培地にはpH指示薬としてニュートラルレッド, 基質として乳糖が含まれ, 培地上に発育した大腸菌群に属する細菌は乳糖をブドウ糖とガラクトースに分解し, さらにこれらを利用し酸を産生します。ニュートラルレッドは高いpH (アルカリ性) で黄色, 低いpH (酸性) で赤色に呈色しますので, DC培地上に発育した大腸菌群のコロニーは赤色に発色し, さらに低いpHでは組成中のデソキシコール酸が沈澱してコロニーとその周囲が赤〜レンガ色に発色します。また後者の例としては, 大腸菌群用としてX-GAL (5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-ガラクトピラノシド) を含むX-GAL寒天培地などがあります。X-GALは酵素, β-ガラクトシダーゼにより加水分解され, 青色の不溶性インジゴブルーを生成します。そのためX-GAL寒天培地に発育した大腸菌群に属する細菌は青色のコロニーを形成します。培地上のコロニーが発色するもう一つの理由に, コロニーが自ら色素を産生して発色する場合があります。特に環境由来の微生物の中にはピンクのコロニー(Methylobacterium属の細菌やカロチノイド色素を産生するある種の酵母用真菌など) や黄色いコロニー (Micrococcus属や黄色ブドウ球菌など), 稀には紫のコロニー (Chromobacterium属など) を形成する菌種もあります。

ご質問のPGY培地やリン酸寒天培地にはpH指示薬や発色合成酵素基質などは含まれていませんので, この培地上で見られたピンクや黄色のコロニーは, 菌種は特定できませんが, おそらくは菌そのものが色素を産生して発色したものと考えられます。

(日水製薬・三品 正俊)


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