04/06/10
04/06/11
■ 細菌培養と“光”
【質問】
 初めまして。インターネットで検索をしていくうちに, こちらのホームページを偶然拝見しました。まったくの門外漢なので, 的外れな質問かと思いますがお許し下さい。

 田舎の個人事業主ですが, 現在, LED照射と植物の花芽生成に関するささやかな研究を行っています。先日, ある医療関係の方から, 細菌の培養スピードが遅いので, それを促進する為に光の照射が有効ではないか??? との質問を受けました。その方もそのような実験をなされたこともないようで, 単なる思いつきで仰ったことのようです。インターネットにて, 光と細菌の培養をキーワードにそのような研究や実績があるのか検索してみましたが, これといった情報は得られません。そこで質問なのですが, “そもそも細菌などの培養に光の照射が何らかの影響があるのでしょうか???”若しくは影響する可能性はあるでしょうか???

ご教授の程, よろしくお願いいたします。

【回答】
 細菌の増殖に光の照射が影響するかとの質問と理解します。細菌の増殖には, 温度と湿度, 栄養素, 酸素濃度などが影響する因子として知られています。細菌の増殖形式は1個の細菌が2個に分裂することです。大腸菌などの腸内細菌群は20〜30分, 結核菌は14〜16時間が一回の分裂に要する時間です。光と細菌の増殖については, 多くの成書にもまったく記述はないようです。しかし, 紫外線は細菌のDNAを破壊するため, 殺菌に使用されていますので, 細菌の種類によっては影響することが考えられます。植物のように光受容体があれば, 植物ホルモンによって情報伝達が行われ, エチレンやオーキシン, サイトカイニンの合成により形態分化に影響しますが, そのような物質は現在のところ細菌の代謝では知られていません。もし実験されるのであれば, 上記の培養条件を一定にして, 光照射の種類を可視光線, 赤外線, 紫外線と変化されては如何でしょうか。

(愛媛大学・村瀬 光春)

【質問者からのお礼】
 初めまして。ご丁寧なお便り, ありがとうございました。

 私の地元は, LEDの200億円訴訟などで最近何かと話題の日亜化学のお膝元です。ポカリスェットの大塚製薬, 一太郎のジャストシステム以外にこれといった企業もない処ですので, LEDの日亜化学は全県あげてのBACK-UPと言うか, とにかく何にでもLEDを照射してみてようという空気が充満しています。青色のLEDを照射するとイチゴに虫が付かなくなったとか, 病気の魚が治ったとか, 本当かウソか判別のつかないような話がとびかっている状況ですが, 中にはしっかりとした科学的な研究もそれなりに進んでいます。光と植物の成長に関しては, 相当以前から研究されてきているようですが, LEDの登場で比較的シャープな波長帯の光が簡単に照射できるようになったので, また改めて見直されているような感じです。葉緑素をもつ植物に関しては, 赤色が植物の成長を促進し, 青色は抑制する, 花芽の形成には青色が有効などなど, この波長の変化と照射時間, 温度などを組み合わせることにより, 植物の成長や開花時期をコントロール出来そうです。また葉緑素を持たないキノコでも, 青色の照射で面白い変化が見られたという報告もあります。光と細菌増殖についてはあまり研究されていないようですので, 案外思いがけないことが起こるかも知れませんね。頂いたアドバイスを参考にして, 考えてみたいと思います。ありがとうございました。


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