|
【質問】
いつもいつも参考になるお話ありがとうございます。血液培養の採血についてお聞きします。
カルチャーボトルに血液を注入する際は, 皮膚の常在菌などの汚染を防ぐために,
採血に使用した針は取り外し, 別のものにするというのが自分の持っている資料では鉄則のようです。が,
看護士さんの話によると, 先生によっては逆に取り外しなどの手間を考えると,
その際に汚染の恐れがあるのでそのまま針を取り替えず使用する先生もいるとのことでした。体中のあちらこちらからMRSAが確かに検出はされているものの,
体調は悪くない患者さんの血液培養でMRSAが検出されたり, CNSが嫌気培養の方からのみ検出されたりと,
これは本当に血中にいた菌なのか...??? と疑問に思うことがたびたびあるのですが,
感染症委員会などで発言を求められた際に困りますので, 基本的な考え方をお聞かせ願えたら幸いです。よろしくお願いします。
【回答】
血液培養では, 皮膚消毒を入念に行ったとしても, 皮膚常在菌の混入は避けがたく,
5%内外の頻度で汚染が起こるとされています。検出される汚染菌としては当然皮膚常在菌が多く,
coagulase negative staphylococciを初めとして, 皮表脂質膜内や毛口部に存在するCorynebacterium
sp., 皮脂腺の導管部や毛根部に多く生息するPropionibacterium acnes
あるいはBacillus sp.などがあげられます。汚染原因としてはcoagulase
negative staphylococciが筆頭ですので, 一本の血液培養ボトルのみより検出されたのであれば,
コンタミネーションの可能性が非常に高いと考えられます。一般に, 検出菌が臨床的意義を持つと判断する条件は,
(1) 同時に培養した複数本の培養瓶から同種の菌が分離された場合, (2) 疾患と分離菌との間に密接な関連を認める場合,
(3) 絶対的な病原菌が検出された場合, (4) 原発病巣や菌血症後の二次病巣から同種の菌が分離された場合などがあげられます。MRSAが単一ボトルから検出された場合の意義付けはなかなか難しく,
採取時のコンタミネーションである可能性は否定できません。MRSAが他の部位よりも検出されているのであれば,
その部位が原発巣であるかどうかの判断がまず重要と思われます。複数回血液培養を行うなどの処置も必要です。
ご質問の血液採取と培養ボトルへの接種時に注射針を交換する“ダブルニードル法”ですが,交換しなくても汚染率が有意に上昇することはありません。むしろ交換時に,
針刺し事故を起こす危険性などを考えると推奨されません。ポピドンヨードを用いた入念な皮膚消毒や,
採血終了時にアルコール綿を注射針に触れさせないなどのテクニックが求められます。採血専従チームの存在が汚染率を有意に下げるというデータからも,
無菌的採血技術が最も大切だと思います。
(近畿大学・山住 俊晃)
【質問者からのお礼】
大変丁寧にお答え頂きありがとうございました。Dr. 間でも採血方法などで確立されたものはないようで,
看護士さんでもどのような方法が良いのか困っていたようでしたので非常に参考になりました。早速院内の勉強会などで必要なときに活用させていただきます。お忙しい中を誠にありがとうございました。また分からないことがありましたらどうかよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
[戻る]
|