■ β-ラクタマーゼの検査方法を教えて下さい | |||||||||||||||||||||||||||||
【質問】
β-ラクタマーゼの検査法には, ニトロセフィン法, アシドメトリック法, ヨードメトリック法があると聞いたのですが, それぞれの検査法について詳しく教えてください。 【回答】 1. β-ラクタマーゼとは β-ラクタマーゼはβラクタム系抗菌薬のβラクタム環を加水分解し抗菌力を失わせる細菌産生酵素の一つであり, ペニシリナーゼ (ペニシリン分解酵素) とセファロスポリナーゼ (セファロスポリン分解酵素) に大別され, 染色体遺伝子またはRプラスミドに支配されています。β-ラクタマーゼは酵素構造や遺伝学的にみて4種類 (class A_D) に分類され, 酵素活性にセリン残基をもつセリン-β-ラクタマーゼ (class A, C, D) と亜鉛をもつメタロ-β-ラクタマーゼ (class B) に大別されます。最近問題視されているextended spectrum β-lactamase (ESBL) は広範囲の薬剤を分解するβ-ラクタマーゼ拡張型として主にclass Aに含まれています。 2. β-ラクタマーゼ試験の目的 β-ラクタム系抗菌薬の使用に際し, 標的となる細菌がβ-ラクタマーゼ産生菌株か否かの情報はとても重要であり, 菌種と抗菌薬の種類によって若干異なるものの, 感受性検査で≪感性≫と判断されたとしてもβ-ラクタマーゼ産生菌株の場合には治療効果が期待できないことから, ≪耐性≫と判断して報告することになります。 一般的にβ-ラクタマーゼ試験が必要な菌種としては, Staphylococcus属, Haemophilus 属, Enterococcus faecalis, Neisseria gonorrhoeae, Moraxella catarrhalis, Prevotella属, Porphyromonas属などがあげられます。EnterobacteriaceaeやPseudomonas aeruginosaでは感受性検査の成績と一致しない場合がみられることから通常はβ-ラクタマーゼ試験を実施していませんでしたが, 先に述べたESBLの出現によりEscherichia coliやKlebsiella pneumoniaeを中心に検査することが求められています。 3. β-ラクタマーゼ試験方法 検査法としては, ニトロセフィンがβ-ラクタム環の開裂により発色することを利用した≪ニトロセフィン法≫, PCGの加水分解により生じたペニシロン酸をpH変化で捕らえる≪アシドメトリック法≫, PCGの加水分解により生じたペニシロン酸がヨウ素を還元することから澱粉とヨウ素を用いて判定する≪ヨードメトリック法≫が知られています。このうち広範囲の細菌に応用が可能であるニトロセフィン法が推奨されています。 1) ニトロセフィン法 (セフィナーゼ: ベクトン・ディッキンソン) (2) 滅菌精製水30 μl(またはスポイドで1滴)をディスクに浸透させる。 (3) 被検菌株少量 (滅菌楊枝先端で採取)をディスク表面に塗りつける。 (4) 5分以内に判定し, 赤変したものを陽性, 黄色のまま変化しないものを陰性とする。 (2) スライド・グラスの上に試験用ディスクを置き, 滅菌精製水20 μl(スポイドで1滴) で湿らせる。 (3) 被検菌株少量 (滅菌楊枝先端で採取)をディスク表面に塗りつける。 (4) 30分以内に黄色に変化したものを陽性, 紫のまま変化しないものを陰性とする。
(2) 55℃に保った試薬1 (10 ml) に試薬2 (0.5 ml) および試薬3 (1 ml)を混合し, 菌発育した平板にすばやく重層する。 (3) コロニー周囲が透明 (陽性), あるいはコロニー周囲が紫のまま (陰性) (2) 55℃に保った試薬1 (10 ml) に試薬4 (1 ml) を加え混合し, 寒天培地に重層した後, 37℃, 30_60分間静置する。 (3) 次いで試薬1 (10 ml) に試薬2 (1 ml) を加えた溶液を再重層する。 (4) コロニー周囲が透明 (陽性), コロニー周囲が紫のまま (陰性) 一般的にはニトロセフィン法が推奨されているが, staphylococciでは1時間まで反応を観察することが大切である。いずれにしても陽性・陰性の対照菌株を置いて検査することが望ましい。 表1. β-ラクタマーゼ試験の適応
(大手前病院 山中喜代治)
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