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【質問】
いつも楽しく読ませていただいています。私は微細藻を応用した健康食品の研究所に勤務するものですが,
病原性微生物の危険度レベルについてお聞きしたいことがあります。
先日, ある分譲機関からCandida albicansを分譲していただいたのですが,
その時に一緒に送られてきた書類にはこの菌のバイオハザード・レベルが“2”であると記載されていました。ですが,
以前に私がインターネットで別の分譲機関のカタログでこの菌の危険度レベルを調査しところ,
レベル“1”であると表示してありました。
そこでお聞きしたいのですが, バイオハザード・レベルとはどういった規定によってレベルがつけられているのか???
またそのレベルの判定基準は機関によって異なるものなのか??? 教えていただけないでしょうか。ひょっとすると,
私が調べたホームページ先の入力ミスということも考えられますが, 疑問に思いましたので質問させていただきます。以上,
宜しくお願い致します。
【回答】
微生物を取り扱う指針としては、人および動物に対する危険度を基準にしたバイオセイフティーレベルが定められています。国内では、国立感染症研究所の「病原体等安全管理規定」やそれに基づいた日本細菌学会の基準があります。また文部省の「大学等における研究用微生物安全管理マニュアル」もこの基準に則っています。ただし法的に定められたものではありません。国立感染症研究所の「病原体等安全管理規定」により以下のように分類されています。
危険度
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分類基準
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内 容
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レベル1 |
個体および地域社会に対する低危険度 |
人に疾病を起こし、或いは動物に獣医学的に重要な疾患を起こす可能性のないもの。 |
レベル2 |
個体に対する中等度危険度、地域社会に対する軽微な危険度 |
人或いは動物に病原性を有するが、実験室職員、地域社会、家畜、環境等に対し、重大な災害とならないもの、実験室内で暴露されると重篤な感染を起こす可能性はあるが、有効な治療法、予防法があり、伝播の可能性は低いもの。 |
レベル3 |
個体に対する高い危険度、地域社会に対する低危険度 |
人に感染すると重篤な疾患を起こすが、他の個体への伝播の可能性は低いもの。 |
レベル4 |
個体および地域社会に対する高い危険度 |
人又は動物に感染すると重篤な疾患を起こし、罹患者よりも他の個体への伝播が、直接又は間接に起こり易いもの。 |
(国立感染所研究所病原体等安全管理規定より抜粋)
また取り扱い指針が次のように示されています。
レベル1の病原体 |
通常の微生物学実験室を用い,特別の隔離は必要ない。
一般外来者の立ち入りを禁止する必要はない。 |
レベル2の病原体 |
通常の病原微生物学実験室を限定した上で用いる。
エアロゾル発生のおそれのある実験は生物学用安全キャビネットの中で行う。
作業中は,一般外来者の立ち入りを禁止する。 |
レベル3の病原体 |
廊下の立ち入り制限,二重ドア又はエアロックにより外部と隔離された実験室を用いる。
壁,床,天井,作業台等の表面は洗浄及び消毒可能なようにする。
排気系を調節することにより,常に外部から実験室内に空気の流入が行われるようにする。
実験室からの排気は高性能フイルターで除菌してから大気中に放出する。
実験は生物学用安全キャビネットの中で行う。動物実験は生物学用安全キャビネット又は陰圧アイソレーターの中で行う
作業職員名簿に記載された者以外の立ち入りは禁止する。 |
(日本細菌学会指針)
バイオハザードレベルの基準は海外も基本的には同じですが, 国や団体により必ずしも一致しているものではありません。ご質問のCandida
albicansは入手先が不明ですが, 国立感染症・細菌学会レベル1, American
Type Culture Collection (ATCC) レベル1, Centers for Disease Control and
Prevention (CDC)/National Institute of Health (NIH) レベル1, LCDC96 (カナダ)
リスクグループ2, EU96リスクグループ2 (リスクグループも同じ意味で使用される)などです。しかし,
当該菌種, Candida albicansは原則的にレベル2で取り扱われることをお勧めいたします。
(京都大学・前田 重隆)
【質問者からのお礼】
ご丁寧な御回答をありがとうございました。これからも質問箱を読ませていただきます。今後ともご指導いただきますよう,
宜しくお願い致します。
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