02/12/06
■ 病原性大腸菌の検査方法について
【質問】
 お世話になります。今回は病原性大腸菌の検査についてた教えていただきたいのですが。
 文献を見ると「培地上より5コロニー検査して同じ血清型に凝集が認められるなら起因菌として疑う」とありました。当施設では, 便培養で病原性大腸菌の検査を行う際, 培地上より大腸菌と思われる単一コロニーを無作為に3つ選び, ブイヨンで一晩増菌後, 滅菌処理をして血清型を調べ, 凝集のある菌に対し同定感受性検査を行って報告しています。仮に3コロニー中1つのみ凝集を認めた場合は常在菌として考えてよろしいのでしょうか??? 腸管出血性大腸菌などは, 菌数が少なくても毒素原性であるし, 感染症新法にもからんでくるので, 検査をした方が良いと考えているのですが??? それ以外の大腸菌群ならば検査の必要はないのか等も含めて, 助言いただきたいと思います。よろしくお願いします。

【回答】
 病原性大腸菌は, EPEC, EIEC, ETEC, EHEC, EAggECの5種類に分類されます。質問にあるEPECは, 病原因子としてeae遺伝子, bfp遺伝子が知られていますが, 現在のところ検査室レベルでは血清型にたよらなければならないでしょう。3コロニーの中の1つにだけ凝集が認められても, 報告をした方が良いと思われますが, あくまでも血清型に該当したというだけで, 病原因子を証明したわけではありませんので, 「患者さんの症状と照らし合わせて診断・治療をされることをおすすめします」などのコメントが必要です。もちろん市販の抗血清に凝集のないeae遺伝子, bfp遺伝子を保有する大腸菌もあるようですので, 知識として知っておく必要があります。EIEC, ETEC, EHECについては, 代表的な血清型がありますが, それぞれ組織侵入因子, エンテロトキシン, ベロ毒素の病原因子の証明が必要です。EHECは感染症新法の3類ですので, 特に注意を必要としますが, それ以外の大腸菌も臨床症状によっては検査が必要と思われます。

(愛媛大学・宮本 仁志)

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