03/09/08
■ バルーンカテーテルの長期留置の方の膀胱洗浄について
【質問】
 微生物学とは関係ないかもしれないんですが質問させていただきます。私の働いている病院では, 院内では膀胱洗浄廃止の方向にあります。しかし, 長期にバルーンカテーテルを留置している患者の場合, 浮遊物によりカテーテルが詰まることがあるため, 一度詰まると週2〜3回で定期的に膀胱洗浄をしています。浮遊物に対し洗浄以外の方法はないかと, 現在研究をしているのですが, このホームページのバックナンバーを拝見したところ, 大阪大学の浅利誠志先生の回答に『6. 当分の間, 尿カテを使い捨てにするか, 交換頻度を頻回にして経過をみる』[http://www.jarmam.gr.jp/situmon/catheter.html]とあり, この根拠を教えて頂きたいと思いました。

 実は以前いた病院で, カテーテル交換を2週間に一回がルーチンだったところ, 1週間にしたら徐々に尿中の浮遊物が減っていったのを経験したことがあるのですが, その理由と根拠がわからないため, 現在の病院でこの方法をみんなに伝えることが出来ずにいます。よろしかったら, その理由と根拠と, また文献 (国内の) があれば紹介していただければ幸いです。

【回答】
 バルーンカテーテル管理および膀胱洗浄の是非に関し, 根拠を明示している日本の論文はありません。しかし, 国内論文という要望でしたので, Centers for Disease Control and Prevention (CDC) のガイドラインを国立大学病院用にまとめたガイドラインをご紹介します。下記の(1)〜(5) はその中から抜粋したものですが, 詳細はCDCのホームページ[http://www.cdc.gov]にてすべて無料でダウンロードできます。また, CDCのガイドラインの訳本が大量に市販されていますので簡単に入手できます。

(1) 開放性の尿カテーテルは留置後, 4日以上で100%感染を起こす。

(2) 尿道カテーテル・集尿バッグは閉鎖系を用いることが標準と考えられている。

(3) 前立腺や膀胱術後の出血などで閉塞が予想される場合を除いて, 日常的な膀胱洗浄は行なわない。

(4) 頻回の膀胱洗浄を必要とするほどカテーテルが閉塞している場合には, カテーテルを交換する。

(5) 抗菌薬や消毒薬を用いた膀胱洗浄は, 日常的な感染予防としては行わない。

[参考文献]

国立大学医学部附属病院感染対策協議会「病院感染対策ガイドライン」 平成14年2月, p 53〜55 (3. 病態別ガイドラインの1) 尿路感染防止, 尿道カテーテル管理)

(大阪大学・浅利 誠志)


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