■ Clostridium difficile検査でのCDチェックの意義 | |
【質問】CDチェックはtoxin Aについてではなくglutamate dehydrogenaseを検出していて,
偽陽性がでやすいが, C. difficileの菌量と相関するなどの報告があります。最近toxin
Aをとらえる簡易キットがでています。偽膜性腸炎の発症にはtoxin Aが主役でtoxin
Bもともに関わっていると書かれていました。CDチェックの代わりにtoxin Aの検査のみ実施してもよいのでしょうか。
【回答】C. difficile症はC. difficileの産生するtoxin Aとtoxin Bの協力作用により起こると考えられています。また, C. difficileにはtoxin Aとtoxin Bをまったく産生しない株があります。CD チェックは当初, toxin Aを特異的に検出するために開発されましたが, 現在ではtoxin Aを特異的に検出できないことは周知のところとなっています。しかしごく最近まで, toxin Aを特異的に簡便に検出できるキットが入手し難かったため, 日本では抗菌薬と関連する下痢症の下痢便に限って極めて操作性が優れるこのキットが使用され, 陽性の場合はC. difficile症の可能性が極めて高いという情報を医師に返し, 必要に応じて専門家に下痢便や分離菌の精査(細胞培養による検査や遺伝子検査)を依頼するという方向がとられてきました。最近日本でも, toxin Aを特異的に検出できる簡便なキットが使用できる準備体制が整いましたので, CDチェックに代えて, 積極的に使用すべきだと考えます。その病原的意義は十分明らかではありませんが, toxin A陰性, toxin B陽性のC. difficileの存在が明らかとなっていますので, できればtoxin Aとtoxin Bの両方を検出できる精度のよいキットが臨床家にとってより有用でしょう。 最後に, 本菌は重要な病院内感染菌であることから, 培養により菌分離して将来の疫学的調査のために保存しておくのが理想ですが, 培養を併用しない場合には, 事情が許せば, CDチェックで確かにtoxin産生の有無は不明だが, C. difficileが存在することを確かめることをお勧めしたいです。 (岐阜大学・渡辺 邦友)
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