■ CDチェック陰性の偽膜性腸炎 | |
【質問】
突然の質問ですみません。消化器科の医師をしていますが, 最近過敏性大腸炎で経過観察していた患者が, 下痢, 粘血便を主訴に受診しました。昨年8月に大腸内視鏡を施行しており, 器質的疾患はないと考えておりましたが, その直前に開業医において急性胃腸炎と診断され, 抗生物質を投与されていたため, CDチェックを行ったところ「陰性」でした。翌日, グリセリン浣腸の後, S状結腸内視鏡を行ったところ, 偽膜性腸炎の所見でした。再度, CDチェックを調べましたが「陰性」でした。内視鏡所見から, 塩酸バンコマイシンを投与したところ, 症状は2日後には改善し, 1週間後の内視鏡でも, 粘膜所見も改善していました。ちなみに入院時に施行した便培養は陰性でした。 CDチェック陰性の偽膜性腸炎はあってもよいのでしょうか。御教授いただけると幸いです。よろしくお願いいたします。 【回答】
(2) CDチェックは, C. difficileの産生するグルタメートデヒドロゲナーゼという酵素を検出している検査で, C. difficileの産生する毒素を検出しているわけではないので, 現在ではCDチェックを使用せずに「toxin A検出キット」による糞便検体中のtoxin A検出を行う検査室が多いと思います。ご質問の症例でなぜCDチェックが陰性であったのかはわかりませんが, CDチェックの結果を, “gold standard”とされています細胞培養による糞便中のtoxin B検出と比較しますと, CDチェックの感度はやや低いので, 偽陰性例は珍しくありません。もちろん, CDチェックはtoxin A陰性, toxin B陰性のC. difficileも検出するので偽陽性例は多くなります。 (3) 本症例では, “入院時に施行した便培養は陰性であった”とされていますが, “C. difficileの培養”を検査室に依頼したのか, 検査室はその依頼を受けてアルコール処理などの芽胞選択を行い, 選択培地を使用し, 嫌気培養を行ったのか否かをご確認ください。C. difficileは院内感染の原因菌としても重要です。院内感染が疑われた場合の調査にも菌株が必要となりますので, できれば菌の培養を行って下さい。 (国立感染研・加藤 はる)
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