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【質問】
偽膜性腸炎患者の使用した“トイレの消毒”はどのようにしたらよいのでしょうか???
一般患者と同一のトイレを使用した場合のことです。患者さんは歩行できて, 排泄はトイレでできる方の場合です。それと,
“シャワー室の消毒方法”も教えて下さい。当院の医師は「Clostridum difficileは内因性のもので,
誰もが持っている細菌なので気にすることはない」と言っています。患者が増えているので,
どうしても外因性の感染も私自身疑っていますが, 取り扱いに困っています。
【回答】
偽膜性腸炎は, 内因性のものと外因性のものとがあることがわかっています。また,
入院患者さんの間で流行が起こった事例が少なからず報告されています。抗菌薬の投与を受けていて,
Clostridium difficileに免疫のない患者さん, あるいはなんらかの理由で免疫応答が低くなっている患者では,
あなたの御心配の外因性の感染にも十分注意する必要があります。従って, “激しい下痢をしている偽膜性腸炎患者さんには,
他の抗菌薬治療を受けていて偽膜性腸炎を発症していない一般患者とは別のトイレを使用していただく”ようにしたほうがよいでしょう。しかし,
下痢がおさまった場合には, 患者さんの心理的な影響を考えて別にしない方向が欧米ではとられています。そのようなやり方がいいと思います。しかし,
このようなトイレの使い方の指導にはかなり苦労がいるようです。つまり, C.
difficile偽膜性腸炎が外因性でもおこること, 抗菌薬投与が発症の前提条件であること,
一般入院患者さんといってもその中にはC. difficileをすでに保菌して免疫のある人がいること,
一部にC. difficileの保菌がなく, 感受性が高く感染した場合に軽く終わる人,
重症化する人があることなど, 本菌と本菌によるの感染症について医療従事者が知識を深める努力をすることと,
患者に対する教育啓蒙が必要でしょう。
さて, 用便後の手洗いを特に励行するように指導して下さい。また, 患者さんが使用するトイレ,
シャワー室の掃除の際には, 人の手が触れるような場所を重点にお願いします。また,
濃厚なC. difficileを含んだ下痢便による汚染をおこしてしまった場合など, “汚染度に応じて,
殺芽胞性の消毒薬を選択”してください。この菌は芽胞菌です。次亜塩素酸ナトリウムが使いやすいでしょう。
(岐阜大学・渡邉邦友)
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