04/06/17
■ 腸内細菌群選択培地での選択原理
【質問】
 腸内細菌群の選択培地 (例えばマッコンキー培地やメルクのクロモカルトコリフォーム培地など) にはSDSや胆汁酸塩などの界面活性剤が添加されており, そのことによりグラム陽性菌や酵母などの生育が抑制されるとのことなのですが, 実際にはどのような原理 (仕組み) で腸内細菌群のみが選択されてくるのかを教えていただきたく思いましてメールさせていただきました。よろしくお願いいたします。

【回答】
 グラム陽性菌とグラム陰性菌の違いは, グラム陽性菌はペプチドグリカン層が厚くて細胞外膜がなく, 他方グラム陰性菌はペプチドグリカン層が薄くて細胞外膜を持つことです。この細胞外膜のないグラム陽性菌は, 胆汁酸の界面活性作用により溶菌して発育が抑制される仕組みになっています。グラム陰性菌は細胞外膜によって環境から細胞を保護することで発育が可能になります。ただし, 胆汁酸の濃度を高くすればグラム陰性菌も発育が抑制されます。この濃度差を利用した選択培地がサルモネラ, 赤痢菌分離用のSS寒天培地 (胆汁酸8.5 gram/L), 腸内細菌分離用のマッコンキー寒天培地 (胆汁酸1.5 gram/L) などです。

参考文献: 栄研マニュアル (第10版), 栄研化学株式会社, 1996.

(愛媛大学・村瀬 光春)


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