04/06/30
■ ディスポ注射針の再利用と安全性
【質問】
 お忙しいところすみません。看護師です。ディスポ注射針の再利用と安全性について教えてください。

 開業医で子どもが筋肉注射を受けることになり, 見ていると“ガラスの注射器にディスポの針を煮沸消毒したもの”を使用していました。公立の大きな病院でしか働いたことのない私には考えの及ばなかった行為であり, 「え〜っ!!!」と思っている間もなく注射が終わってしまいました。約20年前, 看護学校では肝炎ウイルスには芽胞があるので煮沸では感染するので滅菌しないといけないと習った記憶があり, 不安でした。これは誤りで, 芽胞はウイルスには存在しないということは理解しています。また, 煮沸でもウイルスは不活化するとも知りました。しかし, 感染は絶対起こらないと言い切れるものかどうかがわかりません。ディスポの注射針の再利用, また体内に用いる機械器具や注射針を煮沸消毒だけで使用しても問題 (様々な感染) ないのでしょうか??? ユニバーサル・プリコーションについても教えてください。よろしくお願いいたします。

【回答】
 文面を読まして戴きました。病原性微生物の感染対策は非常に重要です。ヒトへの微生物感染を防御する目的で, 医療施設では医療用器具や器材の滅菌や消毒を行っています。ここで“滅菌”と“消毒”とは区別されます。滅菌とはすべての微生物を死滅される方法です。例えば, 乾熱滅菌 (180℃, 15分以上の加熱), 高圧蒸気滅菌 (121℃, 15分)。これらの条件では, 最も耐熱性である細菌の芽胞も完全に死滅します。外科手術に使用される手術器具はすべて滅菌されています。一方, 消毒の定義はなかなか難しいですが, 私は微生物から感染力をなくすること, 微生物を除去ことと理解しています。煮沸消毒, 消毒剤による消毒 (アルコール, フェノール, グルタールアルデヒドなど)。口腔, 気管内, 食道, 胃, 腸管や尿道などの粘膜に細菌 (常在菌) が存在する部位に使用するチューブ, カテーテルやファイバーなどは消毒すれば問題はありません。滅菌する必要はないわけです。

●ディスポの注射針の再利用はだめです。本来, ディスポ製品は使い捨てのものです。

●上記した常在菌が生息する部位に使用するものであれば, 煮沸消毒でよろしいでしょう。しかし, 無菌的な部位で, 無菌的な手術が必要な場合には無菌器具を使用します。

●一般的に, 患者さんの体液 (血液) が付着したものはすべて感染性のものと判断します。

(近畿大学・古田 格)


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