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【質問】
質問箱コーナーでClostridium difficile (CD) による偽膜性腸炎について,
“環境や糞便中のCDが口から入ること, そして医療従事者が介する交差感染です”と回答なさいましたが,
戸田新細菌学第31版には“本来, 正常細菌叢を構成する少数菌として, 正常腸管内に常在している”とあります。他の本にも同様のことが書いてありますが,
基本的に菌交代現象で発症するのではないのですか???
【回答】
ヒトを含む哺乳類は, 出生前の子宮内では無菌動物です。出生してから,
いわゆる正常細菌叢をもつことになる訳ですが, この正常細菌叢自体, 外因性のものです。Clostridium
difficile (CD) は自然界に広く分布しています。土壌, 乾草, 砂, 各種哺乳動物の糞便などです。胎児が出生し,
新生児となると, 生後1年以内に約半数の子供は無症候性の保菌者になります。これが生後2年程経過すると,
保菌率は4%未満にまで減ってきます。成人になり, 抗菌剤投与を受けると保菌率は50%近くになります。この保菌率の上昇にはふたつの成因があります。病院環境では特にCD胞子が拡がりやすく,
医療従事者が介する交差感染もあるという外因性のものと, 内因性のものとして質問者が指摘している菌交代現象があります。しかし菌交代現象は,
少数であっても患者があらかじめCDを保菌していることが前提となります。
(琉球大学・山根 誠久)
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