02/10/23
■ コロナイゼーションと思われる細菌の扱いについて
【質問】
 初めて質問します。微生物の検査を始めて一年の検査技師ですが, 例えば喀痰からブドウ球菌が少数, 培地に発育した場合に, MRSAの判定のために感受性試験を行う必要がありますか???

 先日, カルベニンを投与されている患者様の便培養から緑膿菌と腸球菌のみの発育を認め, 腸内細菌の発育を認めませんでした。上役が, 感染対策上この二菌種の感受性試験を行えと言われたのですが, 自分は必要ないように思いますが??? 併せてお答え頂ければ幸いです。

【回答】
 例えば, 喀痰にブドウ球菌が少数生えた場合に, MRSAの検査が必要か。

 ブドウ球菌にも, 黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌などがあるので, まずは両者のいずれであるかを決定する。

(1) 黄色ブドウ球菌であれば, 院内感染対策のため, MRSAを検査を行う必要がある。
(2) 次いで, 保菌者か, 感染者かを検討する。

 カルベニンが投与される患者の糞便から, 緑膿菌と腸球菌のみが分離されたが, 他の腸内細菌は分離されなかった。分離された緑膿菌と腸球菌の感受性検査を行うか, どうかについて。

 まず, この患者がいかなる状態, いかなる感染症で, カルベニンを投与されているのかが, 非常に重要です。腸管感染症以外, 例えば呼吸器感染症の治療目的でカルベニンやその他の抗菌剤が長期投与されていると, 耐性菌のみが発育し, 菌交代現象により, このような便培養成績になることがあります。放置すると菌交代現象→菌交代症になるので, 現段階では薬剤感受性検査を行うよりも, 主治医には糞便に抗菌剤の影響と考えられる菌交代現象のあることを伝える必要があります。また, 場合によっては, 緑膿菌や腸球菌の感染症対策として薬剤感受性をしておくことも必要です。

(近畿大学・古田 格)


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