03/07/09
M. tuberculosis complex の“complex”に困っています
【質問】
 いつも丁寧な回答をありがとうございます。検査センターに勤務しております。抗酸菌同定検査の医師への対応についての質問です。

 抗酸菌同定検査に極東製薬工業のDDHを使っています。同定結果を“M. tuberculosiscomplex”と報告すると, たびたび顧客より“complex”とは何ですか??? ヒト型ではないんですか??? 保健所には届けなくていいんですか??? という質問を受けます。結核菌群という結果から, さらに検査を進める必要はあるのでしょうか??? ナイアシン検査を進めることもありますが, 確実ではないとも伝えます。しかしナイアシン検査が追加になることも多々あります。保健所への届出については, 同定検査のみ行なったセンターで保健所へ届けてくださいとはいえないと思います。医師が検査結果などから診断をして届けるという手順になると思いますが, 最寄の保健所へ相談してくださいというような対応でいいのでしょうか???

また日本において, 結核菌群の中のM. tuberculosis, M. bovis以外の菌種が検出されたことはあるのでしょうか??? よろしくお願いします。

【回答】
 M. tuberculosis complexにはM. tuberculosis, M. bovis, M. africanum, M. microtiの4菌種を総称して使っていますが, 日本ではM. tuberculosisネ外はまず検出されていないのではないでしょうか。これらの菌種を詳しく分類するのは困難で, 遺伝学的にも類似しており, 16SリボソームRNAの同定, DNA・DNAハイブリダイゼーション法による同定でも鑑別はできないとされています。

 M. bovisについては, 膀胱癌の治療でBCG弱毒株を使用されることがあるので注意が必要かと思います。まれな症例については, pyrazinamidase 試験, 硝酸塩還元試験, thiphene-2-carboxylic acid hydrazide (TCH) 試験, ナイアシン試験によりM. tuberculosiとの鑑別ができるようですが, 私自身は経験がありません。
 保健所の届け出ですが, 届け出は医師が行うもので, M. tuberculosis complexとして届けられても一向にかまいません。その時に同定方法を記載されると良いかと思います。なにかあるときは, 保健所が専門機関に菌株を送り, 検査します。そのために, 初回分離株は必ず保存して下さい。保存場所に余裕があれば検出された抗酸菌はすべて保存されるのがいいでしょう。

(国立都城病院・斉藤 宏)

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