03/12/10
■ クレゾールを用いた洗濯の効果について
【質問】
 勤務先の特養 (特別養護老人ホーム)の話です。設立以来10年以上, “洗濯にクレゾールを使用していた”そうです。私は医務室配属になって1年ちょっとなのですが, 洗濯にクレゾールという組み合わせに疑問を持って, 私なりに調べてみました。人体への毒性や環境汚染の問題などで, 最近ではほとんど使用されていないとのこと。洗濯 (衣類) への適応は記載がなく, 環境や物品の消毒に昔はよく使用されていたもののようだということがわかりました。しかも施設では“クレゾールと一般の洗濯用洗剤を混ぜて使用していた”のです。「劇薬」で取り扱いの難しい薬品という認識なのですが, 「混ぜる」って危険ですよね。一度勉強会をひらいてクレゾールの使用を禁止したのですが, 最近になってまた,「クレゾールを使わなくなって入所者に発疹が増えた。やはりクレゾールをつかったほうがいい」という意見が出ました。おそらく疥癬を意識しての発言だと思うのですが, 発疹の出ている人から疥癬の診断はでませんでした。かりに疥癬だとしてもクレゾールに予防する効果があるのでしょうか。スペクトルを調べても, ダニへの適応は載っていませんでした。たしかに今施設内で発疹の出ている入所者が増え, 医師からの診断はほとんどがアレルギーや老人性のものというものばかりで, それで処方された軟膏では症状がなかなか改善しないため, なにか他に対策を立てたいと思う気持ちはわかるのですが, “クレゾールで洗濯”という悪習 (だと私は思っているのですが) が復活してしまうのには疑問がのこります。自己流の勉強での知識しかなく, 介護士への意見にもはっきり反論ができないでいます。どうか先生方のご意見をお聞かせください。

【回答】
 “クレゾールで洗濯”というのは, 正しく悪習です。まず, 一般的なリネン類の消毒について回答します。

 リネンの消毒に最も適した方法は温水による洗濯です。65℃・10分間以上の温水で, 洗剤とともに洗濯することで十分です(文献1)。また, 材質が耐えられれば, 高圧蒸気滅菌もよい方法でしょう。

 リネンの“化学的消毒法”としては, 抗菌スペクトルが広く, かつ低残留性である次亜塩素酸ナトリウム (ミルトン) がよいでしょう。洗濯の最終段階のすすぎ段階で, 0.01%液に5分間の浸漬を行えば, 洗濯機内も同時に消毒できます(文献2)。なお, 漂白剤として市販されているハイターやブリーチは, おおよそ5%の次亜塩素酸ナトリウムを含んでいます。最後に, 大型プレスまたは手動型のアイロンを使えば, 完全に細菌は死滅します。

 疥癬の場合も「肌着やリネンは, ビニール袋に入れ, 密封して室内から持ち出し, 50℃で10分間以上の条件になるように, 熱湯に浸して消毒した後, 洗濯する」ことで十分のようです(文献3)。

[参考文献]

(1) Merer, I. M. (ed.): Hospital Hygiene, 3rd ed., Edward Arnold, London, 1985, pp 24-26.

(2) Russell, A. D. et al. (ed.): Disinfection, Preservation and Sterilisation, Blackwell Scientific Publications, Oxford, 1982, p 256.

(3) 愛媛大学附属病院感染対策室のホームページ

(琉球大学・糸嶺 達)


[戻る]