■ 第1種感染症指定医療機関の病室について
【質問】第1種感染症患者の治療を行なう治療室, 検査室は他の一般病棟とは陰圧に保たれた前室により隔離する必要があるのですか。また, 第1種感染症患者は完全に治癒するまで隔離ゾーンから出れないのですか。入院中に死亡した場合の解剖室までの搬送ルートは隔離された専用のものが必要なのですか。

【回答】
(1) 第1種感染症患者の治療を行なう治療室, 検査室は他の一般病棟とは陰圧に保たれた前室により隔離する必要があるのですか。
 質問の第1種感染症患者という表現は適切ではありません。第1種感染症指定医療機関は「第一種病室」と「第二種病室」を同時に持つことが望ましいと法文中には記されています。また第1種感染症指定医療機関が扱う感染症は, 一類感染症と二類感染症です。一類感染症は, エボラ出血熱, クリミア・コンゴ出血熱, ペスト, マールブルグ病およびラッサ熱の5疾患で, これらの疾患を疑う患者または患者はBSL-3(biosafety level 3)をもつ施設で扱うことになっています。この第一種病室の基準は, 前室付きの15F以上の広さをもつ陰圧個室で, 病室内にポータブルX線撮影機, 超音波検査機, シャワー・トイレ・ロッカー等があり, 構造の詳細が定められています。詳細は中央法規から出版されています「感染症の予防及び感染症の治療に対する医療に関する法律」のp 340〜370を参考にして下さい。
 なお, 第二種病室の構造も第一種病室にほぼ準じていますが, 最も大きな違いは「第一種病室は空気感染する感染症」を対象にしている点です。

(2) 第1種感染症患者は完全に治癒するまで隔離ゾーンから出れないのですか。
 一類感染症を疑う患者または感染症患者は, 都道府県知事より「就業制限」を受けますので, 医師が病原体を保有していないことを検査にて確認しないかぎり病室からは出られません。一方, 患者側または保護者側からは, 法18条3項の規定に基づき「確認請求」を求めることができます。これに対して都道府県知事は, 対象者が病原体を保有しているか否かの確認を速やかに行うことになっています。ただ現在のところ, 一類感染症の診断を速やかに行える検査体制は整っていません。

(3)入院中に死亡した場合の解剖室までの搬送ルートは隔離された専用のものが必要なのですか。
 搬送専用の台車が必要です。台車は「トランジット・アイソレータ」と呼ばれ, 患者環境ビニールで覆われ, 内部は陰圧で保たれます。また換気システムも付いており, フィルターを介して外部は汚染しない構造になっています。しかし明らかに一類感染症で死亡した患者の解剖は, 第一種病室と同等の設備をもつ解剖室内でなければなりません。なぜなら解剖後, 皮膚についた血液や体液を従来のように水道水等で洗浄しますと, 発生するエアロゾルを介して解剖スタッフに伝搬するからです。

参考資料: 医歯薬出版社、感染症新法のてびき

(大阪大学・浅利 誠志)

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