02/08/21
■ 食品加工工場での大腸菌群の除菌方法
【質問】
 初めて質問させていただきます。私は食品加工会社で品質管理を担当しており, 細菌の検査も行っています。弊社で製造した商品の他, 調理器具等のふきとり検査もおこなっているのですが, 大腸菌群が頻繁に発生しており, 対処に困っています。そこで質問ですが;
(1) 例えば食品加工の場合, どの程度の温度・時間で大腸菌群が完全に死滅するのでしょうか。ちなみに弊社では魚介類を主原料とした乾燥珍味を製造しており, 温風乾燥機は70〜80℃で稼動しています。
(2) 調理器具等のふきとり検査でも特にこの時期, 大腸菌群が頻繁に検出されています。使用後の清掃が不十分なためだとは思いますが, その他に, 例えば食品に安全な薬剤の散布等, 除菌に必要な手段はないでしょうか。ちなみに, 翌日朝の始業前には60%のエタノールを噴霧してから稼動するようにはしています。
他のホームページを検索しても, O-157への対策はよく出ていますが, 大腸菌群全般に関する情報がなかなか見つかりません。以上, どうか宜しくお願い致します。

【回答】
 ご質問に回答します。しかし専門ではありませんので十分なお答えができませんが, ご了承ください。 
(1) 食中毒対策に関しては, ご存知のとおりHACCP (Hazard Analysis Critical Control Point) をもとに規制されており, わが国でもHACCPに順じた対策がとられています。食品別規格の乾燥食品製品に対しては, 大腸菌は検出されてはいけません。貴施設で大腸菌が検出されていることは問題と考えます。

(2) 食品の加熱加工は原則として, 食品の中心部の温度が75℃で1分間以上加熱することになっております。貴社の乾燥珍味の温風乾燥70〜80℃が適切な温度か否かは判断しかねますが, 大腸菌の中には耐熱性毒素 (ST) を産生する菌種も存在するわけで, その場合には100℃でも毒素は失活しません。

(3) 当面大切なことは, 大腸菌の検出を抑制することと考えます。汚染されてい ない食材の搬入は勿論のことですが, 常に大腸菌が検出されているのであれば, 調理器具 (まな板, 包丁など), 調理台の消毒が大切です。0.02% 次塩素酸ナトリウム (ミルトン, ピューラックス), 0.2% 塩化ベンザルコニウム (オスバンなど)で調理台を清拭します。アルコール噴霧も有効ですが, 60%でなく70%を推奨します。また, ふきんなども定期的に煮沸消毒するか, 作業終了後に薬液に浸して洗浄することをお勧めします。

(4) 稀なことと思いますが, 作業者の手に傷がないか (手袋をしていると思いま すが) も確認してください。また, 極めて稀ですが, 床面からの跳ね水が原因となることもあります。 

(5) 本年6月に強酸性電解水が「食品添加物」に指定されました。強酸性電解水の応用範囲は広く, 厨房での消毒 (まな板の消毒, 床の洗浄等) に使われています。ご興味があれば, 資料を差し上げます。

(NTT東日本関東病院・岡田淳)

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