03/09/22
03/10/03
■ エージレス入りお菓子の嫌気性菌検査の必要性について
【質問】
 菓子製造業の会社で微生物検査を行っていますが, “エージレス”の入った個包装のお菓子は“嫌気性菌の検査”を行ったほうがよいのでしょうか???

【回答】
 偏性嫌気性菌についての質問としてお答えします。ご承知の通り, 好気性のカビは環境から混入して製品に付着し, 包装されてしまうことがあります。“エージレス”は, 包装容器中の酸素を除去することで混入した好気性のカビの繁殖による食品の劣化を防ぎ, 食品の保存性を向上させます。では, 好気性のカビとは反対に, 酸素のない環境で繁殖する嫌気性菌が, エージレスとともに包装された食品中で繁殖する心配はないかと言うのが質問の主旨かと思います。

 お菓子の場合は, 糖度が高く, 水分活性が低いのが一般的ですので, 細菌は繁殖しにくく, 危険性は低いと考えられます。ただし, お菓子の種類によっては必ずしもこの限りではありません。結論から申しますと, ご質問の文面からだけでは, 貴社の状況やどの様なお菓子かも想像できませんので, 単純に検査の要・不要は答えられません。貴社がHACCP方式を導入しているのでしたら, 下記の点も含めて考慮して, 必要と判断される場合にはチェック項目の一つとして加えたらよいと思います。製品化された後の抜き取り検査方式を採用している場合でも, 貴社の状況に応じて判断するのがよいと思います。

 考慮すべきことは, 貴社のお菓子の製造工程において, お菓子が包装される時点で生きた状態の嫌気性菌が製品中に混入する, あるいはしている可能性があるか否かということです。芽胞をもたない偏性嫌気性菌は, 通常の大気環境下では生息できませんので, 好気性のカビと同様に, 包装製品に混入するということは考えられません。問題になるのは, かつて真空パックの辛子レンコン (お菓子ではありませんが) の事例であったように, “食中毒の原因となるClostridium botulinumなどのClostridium spp.が芽胞の状態で環境あるいは原材料から混入する可能性があるか”ということです。これらの菌は環境中では主に土壌中に存在していますので, まず製造所および工程の清掃・衛生管理が適切になされているか, また, 原材料に果実や作物などが含まれている場合には洗浄が徹底されているか確認して下さい。また, 製品の加工方法によっても対応が異なります。たとえば, ボツリヌス菌の芽胞は120℃ 4分間以上加熱すれば死滅しますので, はちみつなど, 洗浄できない原材料を用いている場合でも, これ以上の加熱がされている焼き菓子であれば, 加熱以前の工程における原材料由来の芽胞の混入があったとしても問題ないと考えます。いずれにしても, 貴社の製品と製造工程を, この様な観点から検討して, 検査の要・不要を判断するのがよいと思います。

(岐阜大学・田中香お里)

【質問者からのお礼】

 原材料の土壌菌からの汚染がないか検査を行い, また, 今後, 焼き菓子の焼き直後の中心温度の確認・記録をとっていこうと思います。ありがとうございました。


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