04/05/17
■ 液体培地での嫌気培養
【質問】
 初めまして。お忙しい中, 大変申し訳ありませんが, お世話になります。Propionibacterium acnesを使用して試験を予定していますが, 試験操作についての質問があります。どうぞ宜しくお願い致します。

 抗菌剤を用いて, P. acnes に対するMIC, MIC×2倍の濃度について, 殺菌活性試験を行いたいと考えています。そこで殺菌活性に用いるのは, 液体培養ですが, その際time course をとると思います。その際, 培養中は, 試験管かフラスコを用いたいのですが, 私は嫌気ジャーとガスパックをいつも使用していますが, 試験管などの場合, シリコン栓をしても上記の嫌気環境 (嫌気ジャーとガスパック)のなかにおけば, 嫌気状態になるのでしょうか??? 震盪培養のほうがよろしいでしょうか???

 分かりにくい文章で申し訳ありませんが, 殺菌活性試験方法について宜しくお願い致します。他の方の質問と似ているとおもいますが, 宜しくお願い致します。

【回答】
 ブチルゴム栓で密栓しなければ, どんな栓でも, 栓あるいはその栓と試験管の隙間から, 試験管のヘッドスペースに空気は徐々に侵入していきます。言い換えれば, 酸素は除去されるでしょう。シリコ栓のような通気性があれば, 酸素はかなり短時間 (30分程度) で除去されると想像されます。しかしそれを, レザズリン, メチレンブルー試薬などの酸化還元指示薬などを用いて客観的に確認するためには, 酸素が除かれる時間の他に2時間程度は余分にかかるでしょうから, 数時間の間での菌数の変化をみる (殺菌曲線を作る) ような実験には, 嫌気ジャーを用いるこの方法はあまり勧められません。安定した実験条件が得られないということです。しかし, 100歩譲って, 菌が菌ですから, あなたの場合, 日単位での菌数の変化を追跡するような場合なら許せるかもしれませんね。しかし, 学会発表を目的とするような場合には, より厳密な, 嫌気的な環境で準備すべきでしょう。例えば, 試験管の1本1本の内部を嫌気的に出来、嫌気的に菌の接種が出来るガス噴射法を採用するとか, ハンゲルトの試験管という特殊な試験管を使って酸素の影響をできるだけ少なくするとか, あるいは菌の接種から培養までの操作をすべて嫌気環境で行うことができる嫌気グローブボックスを用いる方法を使うのが無難です。

(岐阜大学・渡邉 邦友)


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