04/03/17
■ 下痢原性大腸菌について教えてください
【質問】
 長野県の病院に勤めています検査技師です。下痢原性大腸菌について質問させてください。

 病原性大腸菌 (EPEC), 毒素原性大腸菌 (ETEC), 腸管侵入性大腸菌 (EIEC), 腸管出血性大腸菌 (EHEC), 腸管付着性大腸菌 (EAEC) におけるO抗原の血清型分類を教えてください。どの血清型がどれに属するのかわかりません。

 また, ベロトキシン産生の菌で市販の43種の血清型に凝集がありません。100℃, 1時間で煮沸を行ったものに関しても同様で凝集がありません。市販されている血清型以外で, ベロトキシン陽性のものが多い血清型はなんでしょうか??? これらについて教えていただけませんでしょうか??? お願いします。

【回答】
 下痢原生大腸菌と主なO抗原の種類を下表に示します。O26やO44といったO抗原型はETECやSTECなどでも共通に見られます。下痢原生大腸菌は毒素などの病原機序によって分類されており, 血清型から下痢原生大腸菌の種類を決めることは出来ません。
 
   種類  主なO抗原の種類
病原性大腸菌
(EPEC)
1, 18, 20, 26, 44, 55, 86, 111, 114, 119, 125, 126, 127, 128, 142, 146, 151, 158, 166
腸管組織侵入性大腸菌 (EIEC) 7, 28, 29, 112, 121, 124, 136, 143, 144, 152, 159, 164, 173
毒素原性大腸菌
(ETEC)
6, 7, 8, 9, 11, 15, 20, 25, 27, 29, 63, 73, 78, 85, 114, 115, 126, 128, 139, 148, 149, 153, 159, 166, 167, 168, 169, 170
腸管出血性大腸菌(EHEC, VTEC, STEC) 1, 26, 91, 103, 111, 113, 117, 121, 128, 145, 157, 172
腸管凝集付着性大腸菌 (EAggEC) 44, 127, 128

 腸管出血性大腸菌(STEC) のO抗原型は特に多数報告されており, 2000年現在で55種類以上にのぼっています。O抗原型別不能例もあり, 市販抗血清に凝集しないSTEC菌株が分離される可能性があります。しかしながら, 市販抗血清はわが国で分離される下痢原生大腸菌の98.6%を型別出来るとする報告があり, その他のベロトキシン陽性O抗原型はあまり知られていません (病原微生物検出情報 No.191. Vol.17, No.1, 国立感染研, 1996)。

 O抗原は熱に安定ですので, オートクレーブで加熱処理して再度凝集を試みて下さい。煮沸加熱で, 非凝集であっても凝集することがあります。市販抗血清以外の下痢原生大腸菌のO抗原型が必要な場合は地方衛研などに問い合わせて下さい。

【参考 これまで報告されたSTECのO抗原型】

O1, O2, O4, O5, O6, O7, O16, O17, O18, O19, O22, O25, O26, O38, O39, O45, O46, O48, O50, O52, O55, O75, O80, O82, O84, O91, O98, O103, O104, O105ac, O110, O111, O112ab, O113, O114, O115, O117, O118, O119,O121, O125, O125ac, O126, O128, O128ab, O132, O133, O142, O145, O146, O153, O157, O116, O165, O172 

(京都大学・前田 重隆, 田中 美智男)


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