■ エチジウムブロマイドが肌に付着した | |
【質問】
私は貴研究会の会員ではないので大変恐縮ですが, 是非教えてほしいことがあり, メールさせていただきました。宜しく御指導願います。 職場でDNA実験に携わっていますが, ほとんどの実験書に「電気泳動の後使用するエチジウムブロマイドは強い発ガン性があり, 手袋などを使用して, くれぐれも直接皮膚に触れぬよう」という記述がありますが, 手袋を使用していても, エチブロ液が跳ねて水滴が顔や腕に付くことが何度かありました。実験書には「皮膚に付けぬように」という記述はあっても, 付いた場合の対処法は何ら記述がありません。急いで石鹸などでの水洗いは行ったのですが, それでよいのでしょうか。 職場の組換え安全委員会の責任者は,「実験書などにはそう書いてあるが, 実際にエチブロでガンになったという話は聞いたことがないし, 以前は塩化セシウム超遠心などで, もっと高濃度のエチブロを使用していた。電気泳動のエチブロ程度の濃度であれば, 水洗いで充分ではないか」という指示だったのですが。 【回答】
さてお問い合わせの件ですが, 万一, 皮膚に付着させてしまった場合 (付着した可能性が考えられる場合) どうしたらいいのかですが, とにかく中和しようなどと考えることなく, 直ちに大量の流水で, 最低でも15分間以上の手洗いをする。この最低でも15分間以上というのが大切なようです。そして長波長の紫外線ランプで確認し, オレンジ色の発色が消えるまで, ブラシと石鹸を用いて洗浄するということでしょうか。 「電気泳動のエチブロ程度の濃度であれば, 水洗いで充分ではないか」とのご指示をお受けになったという件ですが, これは大変危険な認識であると思います。確かに, 私も調べた限りでは, エチジウムブロマイド汚染から皮膚がんが起こったという文献を探すことはできませんでしたが, エチジウムブロマイドが強い発ガン性をもつことは事実であり, こぼして放置すれば, また皮膚などに付着させれば, 例え微量であっても本人はもちろん, 周囲のヒトをも危険にさらすことになります。特にこぼした場合の検出が難しいため, アイソトープよりも危険だと考えるべきでしょう。従って, エチジウムブロマイドの使用に際しては, アイソトープと同様というか, むしろアイソトープ以上に細心の注意が必要ですし, こぼしたり, 皮膚へ付着させてしまった場合の対処方法や廃棄する場合の処理方法を熟知していなければならないと思います。 とにかく皮膚に付着させてしまった場合 (可能性が考えられる場合) には, 可及的速やかに大量の流水と石けんで, 最低でも15分間以上の洗浄が肝要です。 なお, エチジウムブロマイドなどの危険物質を取り扱う施設においては, その取り扱いに関する規定や汚染時の対処法に関するマニュアルなどがある筈ですので, 確認してみてください。もし万が一, それらの取り扱い規定などがないようであれば, 早急に準備されることを強くお勧め致します。取り扱い施設における具体的な規定が明示されているサイトの例を以下に紹介させていただきますので, ご参考にされてはいかがでしょうか。 [http://www.ehs.berkeley.edu/pubs/factsheets/47ethidiumbromide.html]
(信州大学・川上 由行)
【質問者からのお礼】
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