03/01/16
■ エタノールを“ろ過滅菌”して使用すべき???
【質問】 
 いつも丁寧にご指導いただきありがとうございます。 

 わが社ではクリーンベンチ・クリーンルーム内で使用する消毒用エタノール(70〜80%エタノール)を“ろ過滅菌”してから使用しているのですが, 上司に理由を質問すると, エタノール中にも微生物が存在するとのことでした。インターネットで調べてみましたがわかりませんでした。エタノールをはじめ, 有機溶媒中に微生物が存在するということはあり得るのでしょうか。 

 自分の中では混合する水に微生物が混ざっているからろ過滅菌するのだろうと理解しているのですが, その微生物はエタノールと混合した場合にも生存しているのでしょうか。また, 滅菌水とエタノールを混合した方がより清浄度が高いということは考えられますでしょうか。いろいろ悩んでおります。 

 また, クリーンベンチ内で使用する消毒用脱脂綿を浸すエタノールもろ過滅菌が必要だと言われましたが。脱脂綿そのものは未滅菌のものを使用しておりますが, やはりろ過滅菌のエタノールに浸す必要があるのでしょうか。 

 データなどで証明して上司と議論するつもりはないのですが, 自分の中で理解して納得しておきたいので質問させていただきました。よろしくお願い致します。 

【回答】 
 早速お答えいたします。結論から申し上げますと, 消毒用エタノールのろ過滅菌は不要だと考えます。しかし, エタノ−ルをはじめ, 有機溶媒中に微生物が存在することが絶対にないとは言えないと思います。また希釈に際しても, 滅菌水を用いて良くない理由はありません。希釈水が, 例えばエタノ−ル中でも死滅しにくい微生物で汚染されている可能性もゼロではないからです。では具体的に「エタノ−ル中でも死滅しにくい微生物」としては, 芽胞をあげることが出来ます。しかし芽胞は長時間のアルコ−ルへの暴露により死滅します。もちろん調製した消毒用エタノ−ルの希釈水に高度の芽胞汚染が認められ, その消毒用エタノ−ルで作成した酒精綿 (消毒用脱脂綿) を作成した直後に使用した場合は芽胞が未だ死滅しきれてなく, 消毒対象物を芽胞で汚染してしまう可能性は確かに理論上は考えられます。 

 ということで, お答えになっているか疑問なのですが, 通常はここまで神経質に対応していないのが実情だと思います。「ろ過滅菌は不要」と考えて差し支えないと判断しますが, くれぐれも上司の指示が誤りでもないということです。 

(信州大学・川上 由行)

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