02/05/14
Exophiala sp様真菌の意義は
【質問】
 はじめまして。検査センターで細菌検査をしております。
 真菌の検査をしていて, 形態的にExophiala sp様の真菌に時々遭遇するのですが, 環境菌としてよく存在するのでしょうか??? それとも, まれな真菌なのでしょうか??? また, 検査材料でも検出するのでしょうか??? 教えてください。よろしくお願いします。

【回答】
 我が国の空中真菌フローラの研究によると,空中真菌の検出頻度で上位5番までの真菌はペニシリウム,アスペルギルス,クラドスポリウム,フサリウム,アルテルナリアで,戸外および室内ともに大差ないとされています。この中で菌体が褐色を帯びている黒色菌はクラドスポリウム,アルテルナリアであり,したがって, Exophialaはそれほど高頻度に検出される黒色真菌ではありません。しかし,西村らは加湿器,浴槽の水および配水管の泥から Exophialaを分離するとしており,腐朽樹皮,土壌,汚れた水,鳥の巣など自然界から分離されていますので,環境中から分離されることはあると思います。
 Exophialaの中でヒトの病原菌はE. jeanselmei, E. dermatitidis, E. moniliae, E. spinifera が主要菌種で黒色真菌症を引き起こしますが,黒色真菌症の起炎菌種としてはFonsecaea pedrosoi がそのほとんどを占め,Exophialaは低頻度ながら2番あるいは3番目に位置すると思います。黒色真菌症は比較的稀な疾患ですが,主体的な深在性皮膚病巣からリンパ行性あるいは血行性に脳あるいは内蔵に転移病巣を形成する症例もあり,重要な疾患です。検査材料としては皮膚組織が最も多く提出されますが,診療科によっては綿棒で提出される場合もあると思います。

(北里大学・阿部美知子)

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